2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.2

ahead pikes peak

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パイクスピークへ挑戦するにあたって、トライアンフを選んだ理由。それは、並列3気筒エンジンならではのトルク特性だ。

text:伊丹孝裕 photo : 長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.126 2013年5月号]
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2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.2

2輪部門、日本人初表彰台を目指せ!伊丹孝裕のPIKES PEAKへの挑戦 VOL.2

長い間、大部分がグラベル(未舗装路)だった山頂までのコースも、2012年にはすべて舗装され、現在はターマックのみとなった。そうは言っても、当然、ギャップもあるし、砂漠地帯なので砂埃も舞っている。

そして、コーナーの数は150ヵ所以上。ほぼ180度にターンするような低速コーナーも多く、「高回転をキープしながら、シビアなラインを狙ってコーナーに飛び込んでいく」といったサーキット的なライディングは、いたずらにリスクを高めるだけになる。
 
つまり、必要なのは絶対パワーよりもコーナーの立ち上がり加速を稼げるトルク特性だと判断した。低速コーナーでエンジンの回転数がドロップしても、いかに早く回復させられるかが、攻略のポイントになると仮定したのだ。

レギュレーションとも照らし合わせた結果、それに最もふさわしいエンジンが、トライアンフの並列3気筒であり、足回りの装備にも優れた「スピードトリプルR」に行き着いたというわけだ。
 
とはいえ、パイクスピークは初挑戦である。車両制作を進めようとした過程で様々な難関が立ちはだかった。そこに救いの手をさしのべてくれたのが「トライアンフ横浜北」の那波 誠さんだった。

「ひょんなことで、日本人が2輪でパイクスピークに参戦しようとしていることを知ったんです。世界に挑戦しようとしている人が身近にいるんだから、ウチとしてもなにかできないかと。

実は以前、4輪部門で有名なモンスター田嶋さんのパイクスピークにまつわるエピソードを読んで感動したことがあり、偶然その田嶋さんと話をする機会もあったんです。そんな中、今回の話が飛び込んできた。今にして思えば、なにか縁があったんでしょうね。社内では否定的な声もありましたが、純粋に応援してみたくなったんですよ」
▶︎トライアンフ横浜北は、トライアンフの販売台数日本一を誇る。その工場長の坂上裕史さんは、日本で一番トライアンフのエンジンを開けているメカニックでもある。トライアンフの整備について、メーカーや他のディーラーから問い合わせを受けるほど信頼が高い。彼はどのような整備に対しても真摯に向き合う。


そんな那波さんが率いる「トライアンフ横浜北」は、現在4年連続でトライアンフの販売台数日本一に輝いている。その秘訣のひとつが徹底した納車整備にある。そして、その現場を仕切っているのが、今回の参戦車両のメンテナンスを一手に引き受けてくれた工場長の坂上裕史さんだ。

「性分だから仕方がないんですが、全部が気になるんです。極論すれば、メカニックの仕事はネジを右か左に回すだけ。でも、だからこそ拘りたい。

外す時の手順、座面に塗布するグリス、組み付ける時のトルク管理、回す順番、取り付ける角度…と、それらをひと言で言えば〝ネジの脱着〟ですが、そこにはポリシーとノウハウがあります。バイクを設計しているのはトライアンフですが、そうやって手を加え、自分の作品になっていくのがメカニックとしての歓びですね」と仕事に対するプライドを語ってくれた。

「このスピードトリプルRもそうですが、工場出荷時のままでは、基本的にネジやボルト類が強く締まり過ぎています。かと思えばベアリングの圧入は甘かったりと、正直に言えば必ずしも適正ではないんですね。それを適正値に戻すのが基本作業です。

これはレーサーでも、お客様の納車整備でも同じです。エンジン内部も同様で、この車両に関しては、例えばヘッドボルトの締め付けトルクがバラバラだったので、バルブの擦り合わせやシム調整をした後に、すべてを組み直しました。そういうことをキチンと行えば、エンジンは頑丈そのものなので、トラブルを起こすことはまずないでしょう。エンジンはしっとりと回り、3気筒らしいトルク感が出ていると思います」と太鼓判を押す。

坂上さんが組み上げ、パイクスピークで勝てる車体だと自負するスピードトリプルR。
 
次号ではその完成形と国内でのテストの模様をお伝えしたい。

トライアンフ横浜北
住所:横浜市都筑区折本町456-1
TEL:045(470)3988
営業時間:10:00〜19:00
定休日:毎週水曜日
URL:www.bigfour.co.jp
MAIL:info@bigfour.co.jp

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text : 伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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