クリステンセンが貫禄で制した 2013年のル・マン

アヘッド ル・マン

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周年を迎えたル・マン24時間レースは6月22日〜23日、全長13.629㎞のサルトサーキットで行われた。注目はアウディ対トヨタのハイブリッド対決だ。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.128 2013年7月号]
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クリステンセンが貫禄で制した 2013年のル・マン

クリステンセンが貫禄で制した 2013年のル・マン

モーターで前輪を駆動するアウディのシステムに対し、トヨタは後輪をアシストする。エネルギー貯蔵装置はアウディのフライホイールに対しトヨタはキャパシタ。システムのベースとなるエンジンはアウディのディーゼルターボに対し、トヨタはガソリンNAだ。ひと口にハイブリッドといっても内容は大きく異なるが目標は同じ。「24時間で可能な限り長い距離を走ること」だ。

3連覇中のアウディは前年のシステムをベースに出力向上を図ってトヨタを迎え撃つ構え。対するトヨタは制御を磨き、エネルギーを効率良く速さに結びつけられるようにした。

パワートレーンの優劣だけで勝負が決まるわけではないのがル・マンのおもしろいところでもあり、難しさでもある。アウディの強みはたとえトラブルが発生しても、短時間で効率的に修復を済ませられること。サービサビリティと呼ぶこの性能が「何が起きるかわからない」24時間レースでは威力を発揮する。

昨年のレースでアウディの強さを痛感したトヨタは、サービサビリティを重視してマシンを設計。さらに、ヘッドランプの光量を大幅に向上させた。夜間走行時の暗さもトヨタの弱点のひとつだったからだ。大から小まで数々の課題を克服した結果、「クルマの動きがおだやかになったことも含め、ずいぶん乗りやすくなりました」と、トヨタ7号車に乗り込む中嶋一貴は言った。

予選〜レースはアウディが終始優勢だったが、3台出走したうちの2台がトラブルで脱落した。一方、昨年は2台ともレースの折り返しを迎えることができずリタイヤしたトヨタは、長時間の作業が必要なトラブルを一切経験せず24時間を走りきった。8号車が2位に入り、14年ぶりの表彰台を獲得した。それでも「完敗です」と関係者のひとりはうなだれた。

4連覇を達成したアウディの2号車は、トヨタ8号車よりも4回多くピットストップしたにもかかわらず、8号車を周回遅れにするスピードを見せつけたのだ。トヨタには「24時間で長い距離を走りきる」力が足りなかった。

フェラーリ458イタリアで参戦した小林可夢偉は、クラス5位/総合21位で終了。LMP2クラスは日産エンジン搭載車が1〜5位を占め、2年ぶりのクラス優勝を手にした。その日産エンジン搭載車をドライブした井原慶子と中野信治は、ともにリタイヤに終わった。

▶︎ブランドとしては休止状態にあったアルピーヌが、1978年以来35年ぶりにル・マンに復活し、話題となった。LMP2クラスを走ったアルピーヌ『A450』は日産製「VK45」型をベースにしたV型8気筒を搭載。
▶︎トム・クリステンセンは2008年以降、勝ちに恵まれなかったが、今回の優勝でル・マン最多優勝記録を9回に伸ばした。「この3月に亡くなった父親がル・マン優勝を強く願ってくれていた」と表彰台では涙した。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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