スーパーGTのトップドライバーがジムニーに乗ったら ―平手晃平

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レーシングドライバー平手晃平、27歳。少年時代にカートで頭角を現し、16歳と2ヶ月でフォーミュラトヨタの最年少優勝を遂げる。03年からは単身渡欧。ユーロF3やGP2に出場するかたわら、トヨタのF1テストドライバーを経験。

text:伊丹孝裕 photo : 長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.126 2013年5月号]
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スーパーGTのトップドライバーがジムニーに乗ったら ―平手晃平 ahead×APIO

スーパーGTのトップドライバーがジムニーに乗ったら ―平手晃平 ahead×APIO

08年に帰国してからは、日本のトップカテゴリーである、「フォーミュラニッポン(現スーパーフォミュラ)」と「スーパーGT」を主戦場に活躍。昨シーズンはレクサス陣営のひとりとして、GT500で2度の優勝を果たし、ランキングも2位につけた生粋のレーシングドライバーだ。いまや、誰もが認める日本のトップドライバーであるのと同時に、次世代のトヨタをも担っている存在と言えるだろう。
 
そんな平手選手が、ちょっとした好奇心に駆られてスズキ・ジムニーのステアリングを握ることになった。かつて住んでいた御殿場にはダートが豊富なため、ジムニーを見かける機会が多く、特にチューニングされたエンジンから発せられる快音や走破性の高そうなタフな足回りに興味があったことが、きっかけのひとつである。

今回は、それを実際に体感すべく、伊豆にあるオフロードコースを訪れた。サーキット、つまりオンロードのプロフェッショナルがオフロードに足を踏み入れるとどうなるのか?素朴な疑問だが、それは本人や周囲の想像を遥かに越えていた。

「ちょっと信じられない! とにかくものすごいスピード感。コブがあってもおかまいなしで、全開のままドッカーンっていっちゃうんですよ。僕の感覚では、止まれるとも曲がれるとも思えない領域なのに、ジムニーは平気。ドライバーもクルマも僕らのカテゴリーとは別世界でした…」

ジムニーの助手席から降りた平手選手は、興奮しながら一気に喋りだす。
まずはコースを知る手始めとして、バハ1000やパイクスピークで活躍するラリースト、塙 郁夫選手の運転で戻ってきた直後のことだ。数周で顔はすでに紅潮している。ここで言う〝ものすごいスピード〟とは、実際のところ時速70㎞程度の話だ。

平手選手が普段乗るフォーミュラマシンやGT500は、時速300㎞近いスピードで競い合っている。それにも関わらず、あまりの勝手の違いに素直に「信じられない」と口にしたことからも、インパクトの強烈さが伺い知れる。
 
とはいえ、彼は日本が誇るトップレーサーである。ジムニー専門ショップ「アピオ」の手掛けたコンプリートカーに乗り込んだ平手選手は、今度は自らステアリングを握ると、すぐにカウンターを当てながらペースを上げていく。

「サーキットの場合、例えばウェット路面でスライドしたとしても、それなりにグリップしているのが前提で、予測の範囲内なんです。でも、オフロードの場合はスライドする量も車体の挙動も読みづらい。それに、路面状況が毎ラップ刻々と変化するので、それを見極めるのも難しい。

しかも凹凸やわだちを利用しながら車体を旋回させたり、止めたりするテクニックも必要になります。集中力の使い方がオンロードとはまるっきり別ですね」
もうひとつの大きな違いが、サーキットではあり得ないヒルクライムやモーグルなどのセクションだ。

「ヒルクライムを登っている時なんか空しか見えないですし、モーグルではタイヤが浮いているのか接地しているのかもよく分からない。サーキットが2次元だとしたら、オフロードは3次元で空間を把握しなくてはいけなくて、これは今までにない第3の感覚が芽生えるような新鮮な体験でしたね。

ジムニーのポテンシャルは普通じゃなかったですが、それを引き出している「アピオ」もすごい。人間の足でも躊躇するところをスイスイと走れてしまうんです。しかも、この仕様で通勤からラリーまでこなせるそうですから、最高に贅沢な一台だと思います」
 
この日、時間の許す限り黙々と走り込み、磨いていた第3の感覚。それが平手選手の今シーズンの活躍に繋がれば、ジムニーファンにとっても、サーキットのファンにとっても痛快な出来事になるはずだ。
平手晃平
1986年3月24日 愛知県小牧市出身
2013年も下記のチームからフルエントリーしている。
「スーパーフォミュラ」 P.mu / CERUMO・INGING ♯38
「スーパーGT」LEXUS TEAM ZENT CERUMO ♯38

JIMNY PROSHOP『APIO』
問い合わせ:TEL:0467(79)3732 www.apio.jp

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text : 伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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