忘れられないこの1台 vol.55 ユーノス・ロードスター

vol.55 ユーノス・ロードスター

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▶︎ユーノス・ロードスターは、マツダが1989年にユーノスのブランド名でリリースしたコンパクトなFRオープンスポーツ。初代、NA6CE型は1.6リッターのNAエンジンを搭載し最高出力はわずか120馬力に過ぎなかったが、軽量ボディにより自由自在なハンドリングが多くの人の心をつかんだ。


「よかったら乗ってみますか?」と笑顔の営業レディ。美人にノーと言えるほど硬派じゃない。実は初めてのオープンカー体験。何だこの解放感、そして軽やかなハンドリング。恥も外聞もなく瞬時に改宗。2ヵ月後、親に大借金してブルーのロードスターを買っていた。

オープンカーのある学生生活。「先輩ドライブ連れてってください」と明らかにクルマ目当ての女子。ありがとうロードスター。でも、すぐにドライブより峠に夢中になってしまった。バイト代はタイヤ、サス、ロールケージに変身。乗り心地はガチガチでボディは擦り傷だらけ。

大学を卒業して入ったのは自動車雑誌の編集部。そしてロードスター4時間耐久レースのお誘い。サーキットなんて走ったことなかったけど選手に選ばれた。レースの舞台は筑波。決勝日の練習走行が初めてのサーキット走行だった。

自分がヘタなんて認めたくないから根性でアクセルを踏む。でも、もちろん遅い。レースはプロのレーサーとの混走。自分の番がまわってきた。前を走るマシンがなぜか近づいてくる。もしかしてミハエル・クルム? 自分のほうが速い? 大いなる勘違い。

実はマシントラブルだったクルムを最終コーナーで抜かし、自分は天才だと叫ぶ。次の周、最終コーナーにアクセル全開で進入。当然曲がれずスポンジバリアに激突、マシンはフロントが潰れレースを台なしにした。

ユーノス・ロードスター

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あまりにも悔しく情けなかった。それから週に1回はサーキット通い。ブルーのロードスターは草レースでボロボロになり、中古で買ったシルバーのロードスターもあっという間にレース仕様。レーサーに乗ってもらい、そのタイムにどれだけ近づけるかにすべてを捧げた。

そしてある日、たったコンマ1秒だけど自分のほうが速かった。心の中でガッツポーズ、そして調子に乗り過ぎた結果のクラッシュ。ロードスターとの生活は突然終わった。

その後買ったのはドイツ製のオープンスポーツカー。ロードスターとは比較にならないスピード、そして完成度。でも、何だか自分の相棒じゃないような気がした。完璧ドイツ娘と10年付き合って最近よく思い出すのは、ロードスターとの楽しかった日々。思い出は現実よりも美しい。高校の同窓会と同じだ。そんなことわかっている。

でも、いつかまた乗りたいと思っている。我が青春のユーノス・ロードスターに。

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text : 古賀敬介 / Keisuke Koga
WRCなどラリーを中心に取材するモーター・レーシング・ジャーナリスト。大学卒業後、自動車雑誌の出版社に入社。モータースポーツ誌やチューニングカー誌の編集部員を経てフリーランスに。学生時代から初代ロードスター、NA6CEを2台乗り継ぎ合計10年以上所有した。

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