埋もれちゃいけない名車たち VOL.15 新時代を切り拓いた"ハイソカー"「トヨタ・初代ソアラ」

VOL.15 新時代を切り拓いた"ハイソカー"「トヨタ・初代ソアラ」

アヘッド トヨタ・初代ソアラ_

クラウンは1955年に初代がデビューして以来、日本の旦那衆の心を長いこと満たし続けていた。それは裕福な家柄の証であり、あるいは成功者の証だった。クラウンは間違いなく日本の高級車のトップにいて、’80年代の声を聞くまでは、日産セドリック、グロリアのようなライバルはいたにせよ、ほとんど日本の高級車の無二的な象徴であった。

それをブチ壊したのは、同じ身内であるトヨタの1台のクーペだった。’81年にデビューしたソアラである。クラウンはあくまでも旦那衆のためのクルマであり、富の匂いはしても、スポーティさやセンスのいい華やかさのようなものはなかった。ソアラはゴージャスさにそのふたつの要素を加えて登場し、BMW6シリーズやメルセデスSLCのような高級パーソナルクーペに憧れる富裕層の心を鷲掴みにしたのだ。

ソアラの最大の美点といえたのは、その前の年に登場した日産のパーソナルクーペ、レパードがSOHCのL型エンジンという旧態然としたパワートレーンであったのとは異なり、新たに2.8リッターのDOHCエンジンを新開発して搭載していたことだ。

170ps/24.0kgmというスペックもさることながら、〝DOHC〟であるというのが効いた。’70年代に排ガス規制の影響でスポーツカーやスポーティカーが次々に骨抜きにされてきたのを見てきた当時のクルマ好きにとって、新たに開発された〝DOHC〟や〝ターボ〟といったキーワードは、それこそ魔法の呪文のようなモノだったのである。

もちろん数値だけじゃなく、ソアラは速かった。コーナーをガンガン攻め抜くのに適しているというより高速道路を余裕を持ってクルージングするのが似つかわしいクルマではあったが、そのパフォーマンスは、〝日本が誇る高性能GTカー〟としての地位をあっさりと手に入れるだけのものを存分に持っていた。

けれど人々が何よりも心惹かれたのは、そのクリーンなスタイリングや嫌味なく豪華なインテリアに漂う〝旦那くさくない〟高級感だった。クルマに明るくない人から見ても、ソアラに乗っているというだけでリッチに思えたし、お洒落を極めた人に思えたものだった。当然の結果として大成功を収め、それが後の〝ハイソカー〟ブームに繋がっていく。

高級車は必ずしも旦那衆だけものじゃない。それを我々日本人に教えてくれたソアラの功績は大きい。

トヨタ・初代ソアラ

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高級パーソナルクーペとしてトヨタ・ソアラがデビューしたのは1981年2月のこと。

それまで日本の高級車は高速性能にはそれほどの拘りを見せず、ひたすら快適性能の向上や装備類の充実を核とした豪華さの演出に力を入れていたが、欧州の高級クーペに対抗できそうな余裕のあるパフォーマンスとシンプルながら整然とまとまったスタイリングなどが大いに受け、高級車のカテゴリーでは一人勝ちといえるほどの成功を収めた。

それが後の高級車&プチ高級車である“ハイソカー(ハイソサエティ・カー)”のブームを生み出した。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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