F1で通算300勝を達成 NGK スパークプラグ

アヘッド NGK スパークプラグ

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寒い朝のエンジン始動であろうと、高速道路で長時間運転しようと、標高の高い場所に出かけようと、「エンジンの着火は大丈夫かな」と、気にする人はまずいないだろう。クルマのエンジンはきちんと動いて当たり前の時代だから。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.134 2014年1月号]
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F1で通算300勝を達成 NGK スパークプラグ

F1で通算300勝を達成 NGK スパークプラグ

電子制御に慣れてしまった現代では感じにくいかもしれないが、エンジンの燃焼室できちんと「火が付く」ことはとても大事なことである。空気と燃料の混合を機械だけに頼っていた時代、エンジンの始動は大きな山場であり、始動したら始動したで、スムーズに吹き上がるかどうか、また別の心配が持ち上がった。

「火が付く」ことの重要性をことのほか重要視していたのだろう。ホンダは1964年にF1世界選手権に参戦するにあたり、それまで2輪レースで付き合いのあった「NGK」に声を掛けた。一緒にやってくれないかと。

「NGK」はホンダの申し出を受け入れた。なぜなら、量産車用のスパークプラグ開発では体験できない未知の経験ができるからである。F1に出たいとか、レースをやりたいといった理由ではなく、技術を磨きたかったのだ。

究極の状況できちんと機能するスパークプラグを開発することができれば、後にその技術は量産品にフィードバックされ、性能は向上し、信頼性は上がることになる。それを期待したのだ。

現在でもレース用のスパークプラグを開発するのは、量産エンジン用を開発するエンジニアたちだ。つまり仕事を兼任している。彼らにとってはレースが特別な世界ではない。研究の対象として量産エンジン用の延長線上にF1があるという認識だ。

苦労を重ねた結果、ホンダは参戦2年目の'65年、第10戦メキシコGPで初勝利を挙げた。当然、「NGK」にとっても初優勝だった。その後もホンダは、'67年のイタリアGPで2勝目を挙げる。

ホンダが'68年限りでF1参戦活動を休止したため、「NGK」とF1の接点もなくなってしまった。接点が復活したのは'76年だ。この年、富士スピードウェイでF1が開催された。「F1世界選手権イン・ジャパン」である。このレースに星野一義(ティレル)や長谷見昌弘(コジマ)ら日本人ドライバーがスポット参戦した。

ティレルもコジマも名機の誉れ高いコスワースDFVを搭載していた。スポット参戦した日本勢に対し、「NGK」はスパークプラグを供給した。供給した関係上、現地にサービス拠点を設けたところ、そこに見知らぬ外国人がやってきて、こう言った。「ウチにも供給してほしい」と。
それが、ロータスのコーリン・チャップマンだった。「NGK」のスパークプラグは'77年から、ロータスが積むコスワースDFVにも装着されることになった。

ブラックのボディカラーにゴールドの「NGK」のロゴマークが映えた。この年5勝したロータスは、'78年に8勝を挙げる。このうち6勝したマリオ・アンドレッティがチャンピオンになったのだ。

'83年にホンダがターボエンジンを引っ提げてF1に復帰すると、「NGK」は過給エンジンの燃焼を「点火」の面で支えた。'84年第9戦アメリカGPでの優勝を皮切りに、勝利を積み重ねていく。節目の50勝は'88年第9戦ドイツGP、マクラーレンMP4/4を駆るアイルトン・セナによって成し遂げられた。

'92年限りで再びホンダがF1から離れると、「NGK」もF1とは疎遠になっていった。呼び戻したのはフェラーリだ。技術の研鑽に結びつくならと、このときも「NGK」は申し出を受け入れた。以来、フェラーリの活動をサポートする。サポートするとは、フェラーリのエンジンが最高の燃焼を行えるように、技術面で協力するということだ。

その結果、フェラーリのエンジンに合った、スペシャルなスパークプラグが生まれることになる。フェラーリが呼び水になったのか、「NGK」はF1での勢力を急速に伸ばしていった。メルセデス・ベンツやBMWも「NGK」ユーザーの仲間に加わった。

100勝は'98年第4戦サンマリノGP。メルセデス・ベンツを積んだマクラーレンMP4-13だった。200勝は'02年第7戦スペインGPでフェラーリF2002が記録する。

そして昨年の第2戦でレッドブルRB9(ルノー)をドライブするセバスチャン・ベッテルが優勝したことで、「NGK」は、F1通算300勝を達成した。シーズン終了時点の勝利数は317にまで達していた。

混合気に火が付くことの大切さを知るプロフェッショナル中のプロフェッショナルから支持を得てきたことで、気付けば「NGK」はF1のトップシェアメーカーになっていた。2010年以降は、負け知らずで全勝しているのだ。

NGKスパークブラグ 
www.ngk-sparkplugs.jp

スパークプラグの主な役割は、エンジンの内部(燃焼室)に運ばれた、ガソリンと空気の混合気に着火すること。着火時の電圧は、家庭用電気の200〜300倍に相当する2万〜3万ボルトにもなる。爆発時には2,000℃以上の高温にさらされ、その後、急激に冷やされる。

その繰り返しに耐えながら、エンジンのパワーを生み出し続けているのだ。忘れがちだが、スパークプラグは消耗品なので、定期的に交換することをお勧めしたい。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
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