ミドルツイン+ターボという提案 〜SUZUKI Recursion〜

アヘッド スズキ・リカージョン

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モーターショーの醍醐味のひとつは、多くのコンセプトモデルを一堂に見ることができることだと思う。コンセプトモデルは、メーカーの提案するメッセージがダイレクトに表現されているので、未来の市販車が予想できる。そういう意味で昨年の「東京モーターショー」は見応えがあった。その中でも個人的に興味の沸いた1台のバイクが存在した。それはスズキ「リカージョン」だ。

text:横田和彦 [aheadアーカイブス vol.134 2014年1月号]
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ミドルツイン+ターボという提案 〜SUZUKI Recursion〜

ミドルツイン+ターボという提案 〜SUZUKI Recursion〜

丸みを帯びた古き良き時代のカフェレーサーを彷彿させるハーフカウルや、小振りなシートカウルなど、懐かしさを漂わせながらも〝近未来感〟を持つフォルムに釘付けになった。そして何より魅力的だったのは、そのサイズだ。100馬力を発生するエンジンを搭載しているのに、250㏄クラスの大きさしかない。

聞くところによると、サーキットでのラップタイムや最高速を狙うというものではなく、「走る楽しさを追求したコンパクト・ロードスター」がコンセプトとのこと。並列2気筒の中間排気量(588㏄)のエンジンにターボを加えるという設定も、「扱いやすい車体サイズに、余裕のある動力性能がファンライドを可能とする」という考え方から生まれたのだという。

この組み合わせは個人的に大歓迎だ。若い頃はリッターバイクやスーパースポーツを乗り継ぎ、常にバイクに明け暮れていた。しかし、その頃と同じだけの〝気持ちのパワー〟を今の生活でバイクに割くことは難しくなった。同じように、少しだけ気持ちの重さを感じている人に、「リカージョン」は、打ってつけだろう。

「気負わずに思い通りに操れる爽快感」その求めていた感覚に「リカージョン」のコンセプトはマッチしたのだ。

けれど、ただ小さくてそこそこ走ればいいかというと、そんな単純なものでもない。バイクを趣味にする人間は、〝持っていて満足できるか〟というのも非常に重要だからだ。

「リカージョン」はその点でも優れている。カウル、タンク、シートカウルが繋がって一体となるデザインが最近の風潮だが、それに反するかのように、ハーフカウル、タンク、シートが独立したデザインで構成されている。

しかし、複雑な面処理をされたハーフカウルは、ハンドメイド感のあるアルミ製ガソリンタンクとうまく繋がり、思わず触れたくなるラインを描き出している。革とカーボンを大胆に組み合わせたシートカウルも上質さを醸し出しながら、この車両のイメージでもある「軽快感」を演出するのに一役かっているのだ。

また、リヤウインカーやナンバーユニットは、リヤタイヤ後端に装着されるという斬新な処理。そこからも単なる懐古趣味のバイクではないことが感じられる。これらの作りこみの良さは、眺める悦びも満たしてくれることだろう。

必要以上に新しすぎず、また過去にも媚びていない。スズキが過去発表してきたコンセプトモデル、「ストラトスフィア」や「ファルコラスティコ」などよりも現実的で今の時代に合っているように思う。スズキの名車「カタナ」が発売された時と同じように、このデザインのままで、市販されることを大いに期待したい。
▶︎「リカージョン」のSOHC並列2気筒588ccエンジンは、デザイン性まで考えて新設計された。低速域はツインのトルクを生かし、高回転域では、ターボのパワーを追加する。この組み合わせは、アンダー400cc程度の装備重量(174kg)にリッターバイク並のパワー(100ps)を実現した。

電子制御の発達により、80年代のターボ車のような扱い難さはないという。軽自動車+ターボの技術を培って来た「SUZUKI」だからこそ提案できたコンセプトモデルだ。
▶︎アルミツインスパーフレームに組み合わされる片持ち式スイングアームのピボットは、「グース」と同じ外側支持とされる。ホイールも専用品。リアサスのリザーバータンクまでもがデザインとして計算されている。2輪車では珍しいサーボ付きブレーキユニット(前後連動式)の採用により、シングルディスク化に踏みきっている。

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text:横田和彦/Kazuhiko Yokota
1968年生まれ。16歳で原付免許を取得。その後中型、限定解除へと進み50ccからリッターオーバーまで数多くのバイクやサイドカーを乗り継ぐ。現在はさまざまな2輪媒体で執筆するフリーライターとして活動中。大のスポーツライディング好きで、KTM390CUPなどの草レース参戦も楽しんでいる。
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