埋もれちゃいけない名車たち VOL.16 時代にかき消された持ち味「ジャガー XJ-S 」

VOL.16 時代にかき消された持ち味「ジャガー XJ-S」

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歴史的にはかなりスポーツ色の強いブランドなのである。実際に屋台骨を支えるのは高級サルーンでも、花形は常にスポーツカーもしくはGTカーであり、自動車の歴史に名を残す名車も少なくない。

けれど時代の悪戯のせいで、本来の素晴らしい持ち味をリスペクトされることなく埋もれてしまいそうなモデルもある。1975年から’96年まで生産されたXJ-S(’91年以降はXJSとなる)がそれだ。

生まれた時代が本当に悪かった。世界的に大人気だったスポーツカー、Eタイプの後継という位置づけであったが、XJ-Sは流行りの方向性を見据え、高級パーソナルクーペとして生を受けた。

上級グレードにはEタイプ譲りの力強いV12ユニットを積んではいたが、当初のキャラクターとしてはXJサルーンのクーペ版のようなもので、どちらかといえば〝伊達車〟。その中途半端な立ち位置が、当初は好感を持って受け入れられなかった。それにこの頃のジャガーは企業として暗黒の時代。生産体制が酷く、品質も高いとはいえず、故障も少なくなかった。

その後、エンジンをチューンしたりシャシーを磨いたりコンバーチブルを追加したり内装をさらに豪華に仕立てたり、さらには徹底的に品質向上を図ったりと様々な改良を試み、後期のモデルはGTカーとして完成度の高いクルマになったが、一度こびりついたイメージは簡単には覆らない。

21年も生産が続いたのだからそれなりの数が世に出たが、それは後継モデルを作り出す体力がなかったから。さらに’96年にようやく登場した後継のXK8がスポーツ色を強めていたことで、XJ-Sはさらに異端的な扱いを受けるようになった。

けれど、とりわけ後期のXJS。乗ると実にいいのだ。伸びやかで上品なスタイリングは同時期のアストンマーティンより遥かに高貴な印象。V12の夢見心地になるような素晴らしく滑らかな感触と重厚な乗り心地は、高級感に満ちている。

そのくせ思い切りスロットルを開けば、意外や豪快に加速する。グループAなどのレースでも驚異的な速さを見せたほど、実は基本的な運動性能も高い。ジャガーの長い歴史の中でも頂点を争うほど、よくできたGTなのだ。

ジャガーとしてはプレス用の写真を僅か数葉しか残さないほど忘れたい存在なのかも知れないが、一度その味を知ってしまったら忘れることなんてできない。XJ-S、最高だ。

ジャガー XJ-S

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XJ-Sはジャガーの歴史の中のキラ星、Eタイプの後継として計画された。当初のコードネームは“XK-F”。そのまま行けば“Fタイプ”となる予定だった。が、時代が求めていたのは豪華さと快適さ。

XJ-Sは高級パーソナルクーペとして1975年に登場する。1996年に生産中止となるまで何度も改良を受け、上位グレードは最終的には300ps/48.4kgmを得た俊足GTへと成長していた。このV12エンジンを徹底的にチューンナップして搭載したグループCマシンが、ル・マン24時間レースで優勝を収めたのはファンの間では有名な話である。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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