F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1 Vol.43 日本人は世界一のF1ファン

Vol.43 日本人は世界一のF1ファン

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▶︎コースの上でもコース外でも飾らない人柄がベッテルの魅力。渋谷でゲーセンに寄ったあと、「ダイレクター・オブ・パフォーマンス」として市販車の開発に携わる結びつきから、日産グローバル本社でイベントをこなし、ファンの熱烈な歓迎を受けての鈴鹿入りだった。第16戦インドでは6連勝を飾り、4年連続のドライバーズチャンピオン獲得を決めた。レース後、ベッテルは「何も悪いことはしていないのにブーイングを受けるのは、正直つらかった」とヨーロッパラウンドでの出来事を振り返った。


「(鈴鹿サーキットは)世界一のコースだし、ファンはクレイジー。もちろん、ポジティブな意味でね。だから、日本に行くのが楽しみだよ」

その日本GPで5連勝を達成したベッテルは、ウィニングラン中に「イチバン!」を連呼した。表彰式でのインタビューではひと言目に「コンニチワ」と言い、ファンに対する感謝の言葉をつづけた。

「何よりもまず、ファンにお礼を言いたい。ドライバーをもてなし、リスペクトする姿勢がすばらしい」

そう語ったのちに、厳しかったレース展開を振り返った。表彰式の後、場所を移して行われた記者会見では、「(スタートで順位を落とすなど)トラブルを経験しただけに、勝利の味は格別だろう」と水を向けられた。するとベッテルは、「それもそうだけど、正直に言うと、コースとファンのおかげだ」と語り始めた。

「朝、ホテルを出た瞬間からファンが出迎えてくれる。彼らは僕らのことを心から応援してくれる。土曜日(の夕方)にコースを走ったんだけど、その時間にまだ、ただ見物するだけなのに5000人はグランドスタンドにいた。彼らはF1の魅力に取り憑かれているんだと思う。そしてそのことが、僕らを心地良く、特別な気分にさせてくれるんだ」

ウィリアムズの公式ツイッターアカウントは、鈴鹿サーキットのゲートでドライバーの到着を出迎えるファンの姿をアップし、「これが世界一のファン。だから日本が好き」とコメントした。熱烈な歓迎を受けるのはドライバーだけではない。ツウでなければ知らないはずのチームスタッフがファンに囲まれ、サインを求められる様子がツイッターに上がり、「日本のファンはエンスージアスティック」と伝えた。

韓国GPを終えたF1マシンは貨物便に載って中部国際空港セントレアにやってきた。その様子はライブで動画配信されたが、深夜の配信だったにもかかわらず、約5000人が視聴した。梱包されたF1マシンが機内から運び出されるだけの淡々とした映像だったが、日本GPが始まる高揚感を伝えるには十分だった。

連戦連勝をつづけるベッテルに対し、いつしかブーイングを浴びせるのが表彰式での慣例になっていた。「いい仕事をした証拠」だとベッテルはどこ吹く風だったが、心地いいはずがない。

鈴鹿で表彰台に上がったベッテルは、ファンひとりひとりの反応を確かめるように、視線を観客席に這わせた。総立ちのファンはベッテルのみならず、2位ウェバーや3位グロージャンに対しても等しく、温かい拍手と声援を送っていた。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

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