誇りの持てる日本のブランド

アメリカに育てられたレクサスというブランド 岡崎宏司

アヘッド LEXUS DESIGN AMAZING

レクサス・ブランドの誕生は1989年。日本が「バブル」のピークにあった時期だが、日本市場での高級ブランド車事業展開は時期尚早、との読みがトヨタにはあったのだろう。圧倒的市場規模と高級車需要のある北米に的を絞ってスタートした。とはいえ、1980年代の日本自動車産業はエネルギッシュで資金力も豊富だった。

動質面とプレミアム面で世界をリードしていたドイツ勢に「追いつき追い越す」ことを目標に、高いモチベーションを持っていた。

そんな時期に開発されたのが、R32型GT–Rであり、NSXであり、初代レクサスLSだった。これらは、性能面においても、品質面においても、ドイツ勢に迫り、あるいは抜いていた。

当時、欧州メーカーのデザイナーやエンジニアから、「日本のメーカーで仕事がしたい」といった声を何度も聴いたものだ。

さて、本題のレクサスだが、初代LSはほんとうにすごいクルマだった。精緻な造り込みと圧倒的静粛性は、世界を驚かせた。それも「衝撃的!」といえるほどの驚きだった。

「LSのボンネットに15個のシャンパングラスをタワー状に積み上げて、4000回転でエンジンを回しても、シャンパンにさざ波が立つだけ。グラスは微動だにしない」…。

今でも「知ってるよ!」というアメリカ人が少なくない、初代LSのCMだが、そんなCMを見た人たちの期待を裏切らない静粛性は、新参ブランド、レクサスに多くのアメリカ人を振り向かせる強い動機づけになった。

レクサスのラインナップには、LS以外に突出した話題になるようなモデルはなかったが、日本車に対する信頼性と経済性への高い評価、加えて、JDパワー社による顧客満足度調査等でも常に最高レベルの評価を受け続けたレクサスは、「短時間で階段を駆け上がる」という、プレミアム・セグメントとしては極めて希な足跡を残すことになった。

ちなみに、モーターショーにおける初期のレクサス・ブースで、もっとも印象に残った展示物は、大きなガラスケースにズラリと並べられた「JDパワー・トロフィー」だった。

「よいものは先入観なしに受け容れる寛容さと懐の深さをもつ北米市場」ゆえの成功ともいえるが、初代LSの実力の高さと、マーケティング/コミュニケーションに関わった多くのスタッフの知恵と努力が、北米におけるレクサス・ブランドの早期認知に大きな役割を果たしたのは明らかだ。

北米でのレクサスの成功要因として、もうひとつ挙げておかなければならないことがある。それはサービス面での取り組みだ。

新参ブランドとはいえ、トヨタが後ろに控えているのだから、信頼性もサービスも安心できるだろうことは、多くの人が理解していたはずだ。しかし、「レクサスのサービス」は「安心」を大きく超えるものだった。

すべてのディーラーがそうだったか定かではないが、私の知るLAのディーラーのサービスは、素晴らしいのひと言に尽きた。

例えば、ビジネスマンが、出社途中の朝7時、ディーラーに寄って愛車を預け、用意された代車に乗って出社。帰路に立ち寄ると、整備を終え、きれいに洗車された愛車が待っている…といった具合だ。

確か、これは15年ほど前に知ったことだが、当時の北米市場のサービス水準を考えると、「あり得ない!」ものだった。

そんなあれこれの積み重ねで、レクサス・ブランドへの市場の信頼は短期間で確固たるものになり、それはリセールバリューの高値安定に結びついてゆくことにもなったのだ。

プレミアム・セグメントでは「やや控えめな」キャラクターも、「目立つクルマには乗りにくい」立場の人たちの支持を受けた。

そんなレクサスが、豊田章男社長自らが先頭に立ち、新たなステージに向けて動き出したのは数年前からだ。

強いインパクトを持つスピンドルグリルの採用、NXやRCといった、今までのレクサスとはひと味もふた味も違うテイスト/キャラクターを持つ新型車の登場、日本でもっとも高感度な人たちが集まる南青山に「INTERSECT BY LEXUS」という情報発信拠点を構え(今後、ニューヨークとドバイにも展開予定)、「AMAZING IN MOTION」の名の下に、かつてない斬新かつユニークなコミュニケーション戦略を繰り広げる。

アメリカ育ちのレクサス・ブランドは、今新たに、ワールドワイドなブランドへと、大きく舵を切り始めたということだ。

モーターショーでも展示された美しいラグジュアリー・クーペ=LF-LCの開発にもGOサインがでたようだし、今後のレクサスは、華も実もある一級のプレミアム・ブランド目指して、加速を続けてゆくのは間違いない。

世界一の自動車生産国である日本から、メルセデス・ベンツ、BMW、アウディ等々と肩を並べられるようなプレミアム・ブランドが、せめて一つでも育ってほしい…私はずっとそう思い続けてきたが、5年先、10年先…レクサスがその願いを叶えてくれるかもしれない。

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