日本における「ルノー進化論」

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同じブランドでも地域によって捉え方が違うことがある。別のページで触れているスバルもそのひとつ。水平対向エンジンや左右対称4WDは共通なのに、日米で異なるイメージを持たれていて、それに見合った車種を投入し成功している。

text:森口将之 [aheadアーカイブス vol.145 2014年12月号]
 

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日本における「ルノー進化論」

日本における「ルノー進化論」

それに比べると輸入車は、舶来モノというイメージが強かったためか、本国での立ち位置をそのまま日本で展開することが多い。その中で独自のマーケティングを実行して成果を上げているインポーターがある。ルノー・ジャポンだ。

現在、日本で輸入車を扱うインポーターは、多くが本国100%出資の日本法人になっているが、ルノー・ジャポンはそうではない。2000年に発足した当時はルノー資本だったが、現在は日産自動車100%出資の株式会社となっている。稀有なる体制なのだ。
 
ルノー100%のままでいかなかったのは、思ったような成績が挙げられなかったからだろう。だから日産傘下になったときは、日本から撤退するんじゃないか?という噂も出た。しかし5年前、現在も社長を務める大極司氏がトップに就任してから、風向きが変わりはじめた。

日産出身の日本人でありながらルノーに出向した経験がある大極氏が掲げたのはFTS戦略だった。〝フレンチタッチ〟 〝トレンディ〟 〝スポーツ〟 の頭文字を取ったもので、欧州でのルノーが総合量販ブランドであるのとは対照的に、ニッチに徹するという、大胆な戦略を打ち出した。
カングー
カングージャンボリー
R.S.ジャンボリー

主役と位置づけたのは、「カングー」と「ルノースポール」(R.S.)。でも売るだけではなかった。ユーザーとインポーターが直接交流できる場を積極的に用意した。カングージャンボリーやR.S.ジャンボリーなどだ。

楽しみ方も提供してくれたというわけだ。自動車雑誌とのコラボで日本一周ツアーも敢行した。僕も九州に行ったことがあるけれど、東京一極集中が進んでいるからこそ、とても喜んでくれた。

こうした戦略が功を奏して、カングーは日本全国で目にできるほど浸透しているし、「メガーヌR.S.」は、国産スポーツモデルと比較して買う人が増えている。

そこに昨年登場したのが現行「ルーテシア」だ。ダウンサイジングターボにデュアルクラッチ・トランスミッションという最新テクノロジーを手に入れたうえに、新たにチーフデザイナーに就任したローレンス・ヴァン・デン・アッカーの手になる分かりやすいデザインを身にまとってきた。
キャプチャー

続いて今年は人気のコンパクトクロスオーバー・カテゴリーに「キャプチャー」を投入。おかげで今年4~9月の登録台数は、多くのブランドが消費税アップの影響を受けて減少した中、前年度同期比で129・5%の2024台を記録している。6年前の2008年度1年分に近い数字を半年でマークしてしまった。

ニッチを目指していたはずが、気がつけばニッチから脱しつつある。独自の立場と多彩な経験を生かした大極流ブランド戦略が遠からず実を結ぶはずだ。

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text:森口将之/Masayuki Moriguchi
1962年東京生まれ。モータージャーナリスト&モビリティジャーナリスト。移動や都市という視点から自動車や公共交通を取材し、雑誌・インターネット・テレビ・ラジオ・講演などで発表。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員、グッドデザイン賞審査委員を務める。著作に「パリ流 環境社会への挑戦」「これから始まる自動運転 社会はどうなる!?」など。
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