Rolling 40's Vol.70 趣味を超えて

Vol.70 趣味を超えて

Rolling

今となってはライフワークと言うよりも、ある種の鍛錬だと思っているくらいだ。バイクに乗り続けることは、生身の自分と向き合うことに他ならない。

この復帰の裏にはある種の焦りがあった。絶対的な体力を必要とするオフロード走行をある程度楽しむなら、今復帰しないと、その先の年齢では楽しむことに限界がある。もちろん、昔取った杵柄でレースなどをするつもりはさらさらない。自由に林道を探検したり、マイペースでモトクロス遊びをする程度がちょうど良いと理解している。

本題だが、オンロードでさえなかなか乗り回す時間がないというのに、さらにオフロードを再開した理由とは何なのか。

遊びを増やし過ぎると、本筋の仕事の集中力に悪影響があると言われることもあった。バイクや遊びのリスクを避け、趣味などは否定して、人生を仕事だけに特化して極めていくというやり方もある。

ただ、これは私の性格なのか、崇高な目標にストイックにひた走るよりも、欲望のままに好きな分かれ道に入ってしまうことが多い。下手をすると器用貧乏の始まりだが、そんな人生を反省するには残された時間が少な過ぎる。分かれ道だろうが何だろうが、前に進んでいる道ならば危ぶむなかれだ。

ただし、今回のオフロード復帰には経済的な準備も含め、2年間くらいの助走期間がある。その時間があったからこそ、いっきに復帰できたとも言える。闇雲に散財している訳ではない。欲望を実現するためには時間も労力も必要なのだ。

その欲望の果ての結果であるが、オフロード復帰は大成功であったと思っている。オンロードではなかなか味わえない、泥の上でタイヤが当たり前のように滑り、それをコントロールする「スライド感」を久々に堪能した。

昔の領域に戻ることは到底無理であるが、その一部分を自分の人生に取り戻したことに興奮した。10代の自分の肉体の中にだけ存在した何かを、ほんの少しだけ再生出来たような気もした。その僅かな「生産物」がオフロード復帰から得たかったモノだ。何も分からずに泥と格闘していた時代に、自分の力だけで手探りで作り上げた感覚。若き日の思い出として色を失う前に、それを「保存」出来たようでもあった。

また、純粋にバイクの楽しみだけの話になってしまうが、オンとオフ、それら両方を楽しむのは必要だと思った。それは真逆な楽しみであると同時に最後には真理を重ねる。

バイクで遊んでばかりには意味があるんだとひとりほくそ笑んだ。そんな感覚を楽しみ吸収することが、感性を糧にする私の仕事には必要だと。

世代的なものなのか、私たちは何かに一球入魂しているスタイルが美しいという強迫観念がある。遊びを廃し、ひとつの道を極めた者こそ評価に値すると。

確かにそれは正しい。私の周りにも仕事や才能においてその域に達した「達人」は少ないながら存在する。趣味は仕事だけというような方もいる。私も彼らを深く尊敬している。

だが、彼らのようになるべきかは別問題だと思う。ここまでバイクに拘り続けると、それは既に私独自の世界であり、ここまで通してきた自分のやり方を、さらにやり遂げた先にこそ、「達人」たちと同じ領域が待っていると思う。

スポーツ選手などにも共通するが、結局は結果に辿り着くまでの自分のスタイルに自信が持てるか否かだろう。乗るか乗らないだけで、ここまで私を悩まし惑わすバイクという存在。そんな刺激を得られる強い存在は、他に何があるというのか。

どうだろう、あなたの中で、仕事や家族や恋人以外で、自分の人生を揺さぶるまでの存在感を見せる存在感とは何なのだろう。

サーフィンは用具は使い捨てだが、無限に変化する波という存在に霊性を感じるという。釣りは作家ヘミングウェイや開口 建にあれだけの影響を与えた。それは釣り糸を通じての、自然との対話だからだろう。

きっとバイクとは、鉄と言う鏡を介した、果てしない自分との対峙なのだろう。バイクに乗ってあちこちフラフラとどこまで自由に出来るかを、自分の肉体と精神に問いかけているのかもしれない。

だから同時に、それが面倒になったり、怖くなるときがいつ来るのかと怯えてもいる。いっそ、そんな趣味など辞めて、ゴルフでも始めれば楽になれるのかもしれないが、それを意地でも許さない何かが自分のなかにある。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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