小沢コージのものくろメッセ その5 日本はなぜブランドを産み出すのが苦手なのか

その5 日本はなぜブランドを産み出すのが苦手なのか

アヘッド 小沢コージ

例えば既にトヨタは安くて壊れなくてイイモノを作るという点で世界最高レベルに達している。それは誰もが認める事実で、韓国に追いつかれつつあるが未だに追いつかれていない。なのに日本はなぜ世界一のブランドであり、スタイルが作れないのか?

具体論としてデザインの弱さやリーダーシップの甘さをあげる人もいるが、不躾小沢的に言わせていただくと、根本的に「イイモノ」と「ブランド」は違うのだ。この手の話になると、私にはいつも言う話があって、それは「世界で最もワガママな客は軽自動車の客」という事実だ。

え?と思うかもしれないが、軽はああ見えて「カッコ良くて広くて速くて燃費が良くて乗り心地が良くて質感も高くて、その上安い」ことが求められている。言わばクルマに求められる性能すべて!だ。

逆に「フェラーリの客は最も緩い」とも言う。なぜなら極端な話「カッコ良くて速い」だけでいい。多少「燃費が悪くても2人しか乗れなくても乗り心地が硬くても」良いし、値段に関しては間違い無く「高くて」良い。中でも初期のフェラーリなどは、F1マシンのデチューン版だったから「時々壊れても」良かったわけで大変不平等な話だがそれでいいのだ。発想が根本的に違うのだから。

つまり軽を人に例えると「どこから見てもいい人」になる。要するに敵をどこにも作らない超平均点キャラだ。一方、フェラーリは典型的なイヤなヤツである。「家事を一切しない美人女優」のようなものだろう。

ここでサッカーの話に戻るが、例えば今年のワールドカップでMVPを取ったアルゼンチンのエース、リオネル・メッシはグループリーグから歩きまくっていた。それはシロウト目にみても分かるほどで、最後の最後の決勝ですら歩きまくり。しかし、彼は誰もが認める天才なので許されていた。決勝は唯一と言っていい決定機を外したので文句も出ているが、あそこで決めていれば「さすがはメッシ」となったことだろう。

ここでなにが言いたいのかと言うと、日本にどれほど優れた選手が生まれてもあの作戦は取らないというか、取れないということだ。それは日本が天才を容認しない国だからである。私はブランド車は理屈だけでは作れないと思っていて、ある種の衝撃というか、伝説が必要だ。そして伝説というのは、均質的な社会からは生まれにくい。

私は実は本田以上に優れた天才が、既に日本にいるかもしれないと考えている。だが、唯我独尊過ぎて浮かび上がれないのだ。ブランドも同様、優れたデザインや発想があっても突飛過ぎて受け入れられないのだ。もちろんこれはあくまでも私の仮説で、本当のことは永遠に分からないわけだが。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

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