埋もれちゃいけない名車たち VOL.26 “大人っぽさ=伊達男っぽさ”を演出 三菱 ギャラン・ラムダ

アヘッド 三菱 ギャラン・ラムダ

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スペシャルティカー(あるいはスペシャリティカー)という言葉が死語のようになってしまってから久しい。現在30歳くらいのヒトは聞いたことすらないかも知れない。今世紀に入ってからはそのカテゴリーに分類されるクルマは生まれてきておらず、もはやカテゴリーそのものが消滅してしまっている印象だ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.142 2014年9月号]
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VOL.26 “大人っぽさ=伊達男っぽさ”を演出 三菱 ギャラン・ラムダ

VOL.26 “大人っぽさ=伊達男っぽさ”を演出 三菱 ギャラン・ラムダ

御存知ない方のために添えておくと、スペシャルティカーというカテゴリーには明確な定義づけこそないものの、主として大衆車のメカニカルコンポーネンツを巧みに利用しながらスポーティな装いを持たせたパーソナルカーを表す。

多くの場合はそれほど高価ではなく、華やかなルックスとほどほどに高い動力性能とそれなりに快適な乗り味を持つ、ぶっちゃけ、スポーツカー風味のデートカーである。当然ながら、スタイルはクーペ以外にはあり得ない。

とりわけ1970〜1980年代は、若者の乗るクルマ&乗りたいクルマはクーペ、と相場は決まってた。まだケータイもメールもSFの世界の話であり、自動車こそが最大のコミュニケーションツールだった時代。

クルマを手に入れてやっと、若い男が堂々と女の子をデートに誘う資格を得られるようなところもあった。カッコいいクルマに乗ることが若者達にとっての何よりのステイタスになるのは当然で、各メーカーが魅力的なクーペをガンガンと市場に送り込んでいたのも当然だった。

今やクーペなど1台も持たず地味目な印象のある三菱自動車も、スタイリッシュなスペシャルティカーを何車種か生み出した。その中で白眉といえるモデルが、1976年にデビューしたギャラン・ラムダだ。

その日本車らしからぬスタイリング。国内初の角形4灯ヘッドランプ、サイドまで回り込むリアウインドー、太いロールバーのようなリアピラー、すっぱりと斜めに切り落とされたノーズなどなど。それまでは見たことのなかった異国情緒溢れるスタイリングは、ただそれだけで強烈なインパクトだった。
インテリアも1本スポークのステアリングにフカフカしたゴージャスなシートと、極めて華やかな印象。それまでは〝大人っぽい=オヤジくさい〟が当たり前だったのに、ラムダは〝大人っぽい=伊達男っぽい〟だった。

動力性能的には見るべきものはなかったが、そんなのはどうでもよくて、当時の若者達は間違いなく一度は、「このカッコいいクルマにあの子を乗せて、どこかに行きたい」と夢想した。そしてそれは、その気になって頑張れば手が届くところにあったのである。

若いカップルがふたり並んでそれぞれのスマホの画面を眺めている時代。「お前らカッコいいクルマに乗ってどこかへ行ってこい! 同じ風景を見て語り合え!」と言いたくなるのは、旧人類なのだろうな……。

三菱 ギャラン・ラムダ

ギャラン・ラムダは、それまでのギャランGTOとギャラン2ドアハードトップ双方の後継として、1976年に発売されたラグジュアリークーペ。その時代に隆盛を誇っていたアメリカ製クーペの香りをどこかに漂わせるスタイリングとインテリアは、その頃の他の日本車にはなかったもの。

排ガス規制の影響もあって走りのパフォーマンスは平凡だったが、存在感は抜群。人気テレビドラマの中で主人公を演じた当時の伊達男ナンバーワン、草刈正雄が乗っていたことも大きかった。プレリュード以前の最強のデートカーだったのだ。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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