小沢コージのものくろメッセ その9 最近のマツダはなぜ凄いのか?

アヘッド 小沢コージ

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最近、ヤケに進捗著しいマツダ。セダンのアテンザ、ハッチバックのアクセラ、コンパクトカーのデミオ。いわゆる「スカイアクティブ技術」が導入されてからの一連の新車は、デザインの質、インパクト、一貫性、走りの良さ、燃費の良さ、ディーゼル技術の投入と明らかに勢いを感じる。

text : 小沢コージ [aheadアーカイブス vol.145 2014年12月号]
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その9 最近のマツダはなぜ凄いのか?

その9 最近のマツダはなぜ凄いのか?

先日、世界カーオブザイヤーの試乗会がアメリカで行われ、そのカナダ人関係者ですら「今気になる日本車? マツダだね」と言っていたわけで、その勢いは世界的にも同じように受け止められているようだ。

原動力は、エンジン開発の人見エンジニアがリードする、常識を覆すガソリン高圧縮技術やディーゼル低圧縮技術もあるし、デザインチーフの前田育男氏が語る魂動デザインもあるし、さらにスカイアクティブボディにスカイアクティブドライブといった個別のハードウェアの良さもある。

だが、その根本はやはりここなのだろう。アクセラのチーフエンジニア、猿渡氏が言っていて、今も忘れられない言葉なのだが「今のマツダはね、上司に提案を持っていくと〝オマエの理想はなにか?〟と問われるんです」

それを聞いた時、小沢は一瞬耳を疑った。ライバルに比べてどうか? 目標を達成できているのか? は分かる。だが、自分の〝理想〟と比べてどうだ? などと小沢自身考えたこともない。そもそも自分の仕事の理想を想定する人がどこまでいるのか。

この時点で、自分はなにを目標に仕事をしてきたか想定せざるを得ないし、自分の内面を振り返らざるを得ないのである。

今よりいいか? 他人よりいいか? は日本人なら常に比べているだろう。しかし、理想とは自分の美意識であり、漠然と考えているゴールの問題になってくる。

しかも今のマツダは、その理想を問い掛ける姿勢が、個々の部門トップはもちろん、最高経営責任者に至るまで一貫しているというのだ。まだその事実を確認出来ていないが、もしも社長自身がモノ作りで理想を問うていると考えたらそれはとんでもない会社だ。

それはほとんど宗教法人的であり、狂信的ですらある。だが、今のマツダを振り返るとそういう事もありうるかなと思った。これくらいしないと、今の横並びのモノ作りから脱出することができないからだ。

日本人の悪しき習慣の1つに、おそらく「隣と比べる」ことがある。他人と比べて自分の庭は青いのか青くないのか、幸せか幸せでないかを考えるから人は不幸せになるのだ。かといって逆に今の現状に満足していても進歩はないし、そこには目標設定が非常に大切になってくる。

これまで小沢は〝理想〟という言葉に青臭いものを感じていた。例えば〝理想の上司〟とか〝理想の彼女〟などと言われて、それを本気で求めている人ってどうかと思っていた。それはまさに夢追いだからだ。

だが〝理想の仕事〟となるとちと事情が異なってくる。その対象が他人ではなく、自分そのものになってくるからだ。

自分の理想を追うということは、自分の力の100%かそれ以上を発揮すること。理想という言葉も使いようによってはなかなか、と思っている今の小沢なのである。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。
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