COTYに輝いたクルマは本物なのか MAZDA DEMIO

クルマが運転を教えてくれる ▼岡崎心太朗

アヘッド マツダ デミオ

「デミオのディーゼルがいいんだよねぇ」そんな父親と祖父の会話をそばで聞きながら、「ディーゼルってなんだ…?」と思っていた。そう、僕はクルマに興味はあるのだが、知識がまだ全くといっていいほどないのだ。

そんな僕がデミオのディーゼルMTに試乗したのは10月9日。ちょうど今年のカーオブザイヤーの10ベストカーがノミネートされた次の日で、デミオはその中の1台に選ばれていた。

さあこれから試乗だ! とは言っても「ディーゼルエンジン」の意味ぐらいは知っていないとさずがにまずいと思い、事前に調べてみることにした。

そもそも「ディーゼルエンジン」とは燃料に軽油を使用し、ガソリンエンジンに比べて主に「燃費がよく、燃料費も安く、停止からの加速性能に優れる」というメリットを持っているらしい。

というように頭の中に最低限の情報しか入っていない状態でデミオとご対面。もともと丸みを帯びたラインのクルマが好みなので、デミオのデザインはすぐに気に入った。

いざ運転してみるとこれがまた思っていた以上に楽しい。正直、ディーゼル特有のトルク感を理解することはできなかったが、普段はATしか運転していないので、久しぶりのMTの感覚が新鮮だった。

しかし同時に「難しさ」もあった。MTに不慣れなせいか、数回はエンストしたし、シフトアップもぎくしゃくしてしまった。

免許を取って1年半。自分で言うのもなんだが運転には少し自信がついてきていた。そんな考えも「お前はまだまだ運転がへたくそだな」とでも言われたかのような気がして少しへこんだ。

でもその反面うまく運転できた時もダイレクトに反応してくれるのがデミオの良いところ。

最初はおそるおそるだったアクセルワークもしっかり踏み込んで加速。エンジンの回転数が上がっていくのを肌で感じてシフトアップからの減速。その一連の流れをつかんだ時は自分がしっかりとクルマを操っている「一体感」を感じることができたし、それは今までATを運転している時には気づかなかった新しい感覚だった。

乗り終わった後も「ワインディングロードを走ったら楽しいだろうなあ」とか「家にもMTのクルマが欲しいなぁ」だとかいろんな事を想像しながらワクワクしていたし、運転に対するモチベーションをあげてくれた。

まだまだへたくそな僕だけど、このクルマを楽しめたことは事実。これからもチャンスがあれば色々なクルマに乗ってみたいと思わせてくれた。マツダの言う「Be a driver」の言葉の意味が少し分かった気がした。

車両本体価格:¥1,944,000
(XD Touring/2WD/6MT、税込)
全長×全幅×全高(㎜):4,060×1,695×1,500
車両重量:1,080kg 定員:5人
エンジン:水冷直列4気筒
DOHC16バルブ直噴ターボ(ディーゼル)
総排気量:1,498cc 
最高出力:77kW(105ps)/4,000rpm
最大トルク:220Nm(22.4kgm)/1,400〜3,200rpm
JC08モード燃費:30.0㎞/ℓ 駆動方式:前輪駆動

日本車の枠を超えた小型車 ▼嶋田智之

アヘッド マツダ デミオ

新型デミオが日本カー・オブ・ザ・イヤーに輝いたことは皆さん御存知のとおり。僕はその選考には全く関係ないが、納得の結果だと思う。だってデミオ、ホントにいいのだ。

まずルックス。ここは好き嫌いが最も表れるところだけど、僕は抜群に素晴らしいと思う。日本の自動車メーカーは必要以上にコストがかかるのを嫌って、普通、このクラスのボディをここまでうねりの効いた立体的な造形にしたりはしない。

コンパクトカーとは思えないほどの輪郭の濃い存在感を放ってるように見えるのは、だからなのだろうと思う。

室内に目を移すと、個人的にはメーターナセルの中の処理がもうちょっと大人びてたら全体的なイメージにもっと合うのに…と思うところはあるものの、シンプルで機能的なデザインは視覚的にも操作性の面でもなかなかのもの。

各部の質感も思いのほか高く、安っぽさが感じられない。それに、シートがいい。座り心地もいいし、自然なフィット感も適度なホールド性もいい。

それも含め、新型デミオはとても乗り心地がいい。車体の剛性感がドイツ車並に高く、サスペンションがしっかりと実力を発揮できてることもあって、ちょっとした高級車にでも乗っているかのような上質な乗り味なのだ。ロングを走っても疲れが少なそうな快適さ。

これまで日本のコンパクトカーでここまで充実した乗り心地を味わわせてくれたクルマは存在しない、と断言してもいい。

しかもこのボディ&シャシーはいかにもマツダらしく、走りの楽しさという点でも秀でている。ありがちな軽々しさと紙一重の軽快感ではなく、芯のむっちり詰まったフィーリングを伴ってしなやかに姿勢を変化させていき、正確に素早くターンを決める。フランス車のように、スポーティだけどオトナっぽい。小さなクルマに乗ってる感じが全くしない。

今回の試乗車は1.5ℓのディーゼル+6速MTという注目の仕様だったが、そのエンジンは2000回転以上をキープしていれば常に力強い加速を提供してくれるし、レスポンスの良さも振動の少なさも上々で、MTのフィールも実に気持ちいい。イタリア車のようにコキコキブンブンと走らせたくなるほど、素直に愉しい!と感じられるクルマに仕上がっていた。

──と、ヨーロッパのコンパクトカーを引き合いに出したくなっちゃったのは、デミオが日本のこのクラスの水準に収まらず、欧州産に匹敵……いや、部分的には凌駕するレベルに到達してるから。大人が何も言い訳せずに乗れる日本製のコンパクトカーが、ついに生まれたのだ。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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