埋もれちゃいけない名車たち vol.35 歓喜のカタルシス、ここにあり「アルファ・ロメオ 164」

vol.35 歓喜のカタルシス、ここにあり「アルファ・ロメオ 164」

アヘッド アルファ・ロメオ 164

精神の浄化には、最初にこの言葉を使ったアリストテレスが示したとおり恐れや哀れみがスイッチになることもあるわけだが、他にも癒やしやナゴミが気持ちを溶かしてくれることもあるし、あるいは快感や歓喜が沈殿していた何かを一気に吹き飛ばしてくれることもある。

その中で僕が最も気に入っているのは、アリストテレスには申し訳ないのだけど、彼にいわせればおそらく邪道の部類に入る、快感や歓喜などによる浄化の方だ。

エンドルフィンだとかドーパミンのような脳内麻薬系ホルモンによる発散型カタルシスは、最もシンプルに幸せな気持ちにさせてもらえるモノだし、実は最も容易に得やすいモノでもあったりするからだ。

例えば、クルマから与えてもらえることだってできる。そういう心持ちにさせてくれるクルマというのは、実は意外とたくさんあるのだ。

いや、何も頭の中がホワイトアウトするようなスピードが出る必要はない。走らせていて「ああ、気持ちいい!」と強く感じられるクルマであれば、ぶっちゃけ、何だっていいのだ。選択肢は決して少なくない。

ちなみに、僕に「ああ、気持ちいい!」を強烈に感じさせ、その後のクルマとの関わり方を大きく変えたのは、アルファ・ロメオ164だった。今の愛車166の先代である。

何が「ああ、気持ちいい!」だったかといえば、搭載している3リッターV6ユニットのサウンドであり、フィーリング。低速域ではゴロゴロと猫が喉を鳴らすような音と感触で、回転が高まっていくとともにルロロロロロ……とリズミカルに唄いながら密度を揃えていき、高回転域ではクォーンと響き渡る見事なオーケストラ・サウンドへと昇華していく。

それがステアリングやペダルからも、振動ともいえないくらいの微細な響きとなって伝わってくる。回転が上昇するのに伴って、パワーが弾けていく。そうした諸々はスーッと身体に染み入ってきて、瞬時に気持ちよさへと姿を変え、いつしかドライバーを別の世界へと誘い込む。

そのルーツを辿ると1979年デビューの〝アルファ6〟へと行き着く設計の古いエンジンだが、その後、これを超えた気持ちよさを持つV6エンジンは世界のどこからも誕生していない、と断言してもいい。

そんな想いもあって、僕は同じエンジンを積む164の後継、166を手に入れたのだった。毎日クルマから降りると、その辺を流して走っただけでもヤケに気持ちがスッキリと晴れている。これを浄化といわずに何を浄化といえばいいのだろう。

アルファ・ロメオ 164

アヘッド アルファ・ロメオ 164

164は1987年にデビューしたアルファ・ロメオのフラッグシップ・サルーン。ピニンファリーナによる端正で美しいスタイリングと、整然としたモダンデザインのインテリアを持ち、FWDながら速度が上がれば上がるほど車体が小さく感じられるようなハンドリングの良さも兼ね備えていた。

本国では直4やディーゼル搭載車もラインアップされたが、メインは3リッターV6ユニット。185ps、200ps、210ps、232psと年式やグレードで幾つかのチューニングが用意された。'98年に後継車の166へとバトンタッチ。累計27万台が作られた。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

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