おしゃべりなクルマたち Vol.80 フレンチコネクション

Vol.80 フレンチコネクション

アヘッド おしゃべりなクルマたち

これは、インターネットで注文してカードで支払い、自分が指定した時間帯にクルマで出掛けて受け取るショッピング スタイルで、駐車場の一角にしつらえられたスペースに乗り付け、携帯に送られた受付番号を告げると、袋に詰めた品物を係のお兄ちゃんがクルマまで届けてくれる仕組み。スーパーのドライブスルーと思っていただければ間違いない。

フランスでもアマゾンはじめ、ネットショッピングは今やものすごい勢いで売り上げを伸ばしている。街の本屋は片っ端から潰れ、個人商店はお手上げ状態。対抗措置としてスーパーは時間短縮を狙ってセルフ スキャンを導入したが、配送については出遅れた感があった。

自宅配送は数年前から行われているものの、(当然のことながら)夜の配送はないし、かといって郵便受けに入るはずもなく、根付くことなく今に至った。そこで登場したのが"ドライブ"というわけだ。

どのスーパーでもドライブという名前なら、注文システムから受け取るスペースの作り方、果ては担当者がロゴ入りジャンパーを着ているところまですべて同じ、他との差異化を考えないのかと不思議だったが、これはこういう買い物の仕方、つまり “システム“を定着させるために敢えて差異化していないと聞いて感心した。

新しいことに懐疑的な敵を、まずはみんなで手なづけましょうってか。

さて、新しいことに飛びつく私は早速、勇んで注文して、勇んで受け取りに行った。ただしダンナを連れて。日本なら初日に列が出来ているかもしれないが、フランスは最初のひと月くらいは誰もいない可能性がある。ちょっと恥ずかしいではないか。それでダンナについて来てくれと頼んだのだった。結果はーー。

クルマから降りずに買い物が出来る、これがドライブの売りだが、まだスタートしたばかりということもあって、ドライブ専用スペースにクルマを駐めてスーパーの中に入る不届き者がいたり、荷物が見つからなかったり、受け取ってその場で中身を確かめる客もいて、ストップ&ゴーとはいかなかった。

慣れればもっとスムーズに進むのだろうと私は思うが、まるでピットのタイヤ交換よろしく、ドライバーが降りることなくバーっと寄ってきた店員があっという間に給油してガラス拭いて灰皿きれいにして、トイレットペーパーをお土産にもたせてくれる、日本のガソリンスタンドみたいには「絶対、スムーズにはいかない」、これがダンナの見解。

それでもスーパーの中に入って買い物するよりは、このシステムを利用した方がずっと時間短縮になる、これは確か。よってタイヘン便利と裁決を下しながら、ふと、考えてこんでしまった。

あれっ、アタシってクルマから降りる時間が惜しいほど、そんなに忙しい人間だったっけ?

パンパンに膨らんだ風船がプシューッと抜けるごとく、"ドライブ"の情熱がいっきに萎んでしまった。

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text:松本 葉/Yo Matsumoto
自動車雑誌『NAVI』の編集者、カーグラフィックTVのキャスターを経て1990年、トリノに渡り、その後2000年より南仏在住。自動車雑誌を中心に執筆を続ける。著書に『愛しのティーナ』(新潮社)、『踊るイタリア語 喋るイタリア人』(NHK出版)、『どこにいたってフツウの生活』(二玄社)ほか、『フェラーリエンサイクロペディア』(二玄社)など翻訳を行う。

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