Rolling 40's Vol.88 執念の幕開け

Vol.88 執念の幕開け

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「40代になると楽だぞ」

38歳くらいのときに、そんなことをaheadの神尾編集長に言われたことがある。確かにそうだった。40代になると、自分の好きなことをする地固めに奔走しながら、その中のいくつかは上手くいった。満足いく結果からは程遠いが、困った状況になっていくような感じではない。御の字と言えるだろう。

しかしそんな季節もあっという間に終わり、いよいよ今年からは完全にアラフィフ世代に突入であり、次のステージでの自分の在り方をイメージしていく必要があるだろう。

答えがある訳もないが、ヒントだけは見つけている。

「しつこさ」

最近、あるラジオ番組でも話したことなのだが、私の仕事の世界というのは、最後までしつこい奴が勝つということに気が付いた。

20代から40代後半に至るまで今の仕事を続けているが、羨ましいくらいに天性に恵まれた輩は沢山いたが、彼らの全てが今も活動を続けている訳ではない。どちらかと言うと、その反対の位置にいたような輩が自分の居場所を固めつつあるというのが現実だ。

先輩や同輩で、実際にそんな方たちと関わったりすると、彼らにいつも感じるのは、輝くような才能ではなく、「しつこさ」なのである。

趣味や遊びに関しても、50代から大事になるのは同じようなことだと思う。ゴルフであろうと釣りであろうと、サーフィン、バイクでも、いよいよ自分の遊び方にブレている時間はない。

私見であるが、40代後半まで続けた趣味や遊びは、身体が動かなくなるまで絶対にやめてはいけないと思う。当然家族の妨害や諸事情なども出てきて、継続が難しくなることも多いと思うが、場合によってはスリム化したり形態を変えたりしてでも続けるべきだ。

男子会的な話になってしまうが、女性というのは男性より趣味に対する執着が少ないと感じることが多い。私のバイク三昧などは自分の妻にとっては狂気の沙汰でしかないらしく、辞めると宣言したら、引退パーティーを盛大に開くと言っているくらいである。

しかしそんなパーティーはまだまだ開くつもりはない。男の趣味と遊びの本当の楽しみ方はアラフィフからなのだ。体力や根性が通じなくなった先で人はやっと知恵を駆使する領域に入りだす。その領域に来て、ようやく自分がこだわり続けた趣味や遊びの意義が分かるはずなのだ。

私に関しては、やはりバイクに乗る意味を悟るということだろう。

休日の余暇として楽しむ訳でもなく、反対に競争目的でもなく乗り続けてきた時間。そのどちらでもないないと同時に、その両者以上に楽しみ拘り続けてきた意味。言葉では表現できないくらいの大きな気持ちを総括するのはこれからなのだ。

四輪やバイクを、国際ラリーに出るまでに楽しみきった先輩大俳優さんがいる。仕事でもお世話になり、人間的にも大変に尊敬できる方だ。

彼は60代後半でバイクを降りたという。それを決めた出来事とは、長年乗り続けてきた自慢の大きなバイクの重さが、ある時、急に怖く感じたからだそうだ。怖いと感じるようなものを、他人様もいる公道で乗ってはいけないと、その日からバイクに乗るのをキッパリやめたという。

反対に、80歳近くになってもハーレーのサイドカーを乗り回している方も知っている。その御大曰く、そのマシンを降りるときは、バイクに一人で跨がれなくなったときだと断言していた。

バイク乗りとしての、最後の姿としてはどちらも正しい。大事なのは引導を自分に渡せるのは自分だけだと言うことだ。

「新年から全開予定」

当たり前の話だが、新年早々からバイクに乗る予定だ。妻はこの寒さの中、バイクという言葉の響きだけで震えると冷笑しているが、バイク乗りにとって寒いと言うのは、走る道が凍って走れないときのみである。オフロードの場合は雪でも関係ないので、シベリアでもない限りは走ってしまう。

年末忘年会で、来年はどうするんですか、ラリーにでも出ますかと言われることも多いのだが、その手の競技にはほとんど興味がない。理由はひとつ、他人に走る道を決められるのが嫌でオフロードバイクに乗っているのに、どうして走るルートを決められる競技でわざわざ汗をかかなくてはならないのか。

同じように、バイクにどうして乗り続けているんですかと聞かれることも多いが、それに関しても答えは同じだと思う。

合法は国民である限り基本だが、その中でもバイクに乗っていると、何かを矯正されたり決められたりする気がしないからだろう。都合の良い錯覚なのかもしれないが、その感触を知っている人生とそうでないものとの違いは大きいはずだ。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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