忘れられないこの1台 vol.74 KAWASAKI KSRⅡ

vol.74 KAWASAKI KSRⅡ

アヘッド KAWASAKI KSRⅡ

▶︎'80年代の初頭、誰が本当に速いライダーなのかを決めるアメリカのテレビ番組の企画として始まったのが「スーパーバイカーズ」だ。オン、オフ、ダートトラックのトッププロを一同に集めて人気を博した。日本では、当初一部のマニアがオフロードバイクを改造して楽しんでいただけだったが、KSRがブレイクしたことによって各地でシリーズ戦が行われるまでになった。


それぞれに思い出があるからだ。必死にバイトして貯めた自分のお金で初めて買ったヤマハ・XT250。前衛的なデザインに惹かれて後先考えずに買ってしまったカワサキ・Z1R。どれも自分の人生に彩を与えてくれた名車と思っている。そんな中で、今も懐かしさとともに時々思い出すのがKSRⅡである。

KSRⅡは当時、アメリカで流行り始めていたスーパーバイカーズ(今のモタード)の雰囲気を投影したモデルとして'90年に登場した。

空冷エンジン搭載のKSからの進化版で、2ストエンジンは水冷化され倒立フォークとディスクブレーキを装備。今では別に驚かないが、四半世紀も前で、しかもミニバイクでそのスペックが与えられていることは、性能主義が抜け切れない当時20代の私にとっては大きな魅力だった。

50㏄版のKSRⅠに対し80㏄版がKSRⅡ。見た目はまったく同じだが、動力性能が圧倒的に違っていたこともあり、街中で見かけるのもほとんどがKSRⅡだった気がする。

とにかく速かった。メカニカルな乾いたサウンドに焼けたオイルの匂い。4ストの倍の効率でピストンを動かす猛烈な瞬発力。そして、両手で抱え上げられるほどに軽量コンパクトな車体。

当時は国道246沿いに住んでいたが、毎日の通勤ではまさに敵なし。今では絶滅種となってしまった2ストの魅力がいっぱい詰まったモデルだった。

アヘッド 佐川健太郎

ほどなくして、レースにもはまった。スーパーバイカーズミニレースというKSRのワンメイクで、昔の筑波東コースでシリーズ戦をやっていた。舗装したコースから途中でオフロードに飛び出していく大胆なレイアウトで、原っぱのような雑草の生い茂るダートを突っ走るのが楽しかった。

そして再びロードコースに戻ってくるとタイヤが泥を拾っているので皆コケまくる。20代後半、まだ会社務めをしていた頃。オンとオフを走り分けるKSRのワンメイクレースは腕を磨くのにもとても役立った。

多摩川の河川敷もよく走った。当時はまだ第三京浜の橋の下にモトクロスコースがあって、ちょっとしたジャンプまでできた。

引越しなどで何年かして手放してしまったが、好きなバイクだった。でも、今また乗りたいかと問われれば否である。それは、かつてのような感動は味わえない、と今の自分は分かっているから。心の中のキラめく思い出の1ページとして残しておきたいからだ。

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text:佐川健太郎/Kentaro Sagawa
モーターサイクルジャーナリスト。出版社、フリー編集者を経て二輪雑誌やWEBメディアに寄稿。動画サイト「MOTOCOM」主宰、「ライディン グアカデミー東京」校長を務めるなど多方面で活躍している。

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