四輪から二輪への逆流 〜45歳のダカールライダー

アヘッド 三橋 淳

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今年、ダカールラリーの市販車部門において5度目のクラス優勝を成し遂げた三橋 淳。築き上げてきたその実績はドライバーとして抜きん出たものであることはもちろん、世界のラリーレイドで通用する日本のトップドライバーであることを物語っている。

text:伊丹孝裕 [aheadアーカイブス vol.157 2015年12月号]
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四輪から二輪への逆流 〜45歳のダカールライダー

四輪から二輪への逆流 〜45歳のダカールライダー

三橋 淳
1970年生まれ。1999年より本格的にライダーとして活動を始め、パリ・ダカールラリーでは2輪部門日本人最高位(総合12位)を獲得。2003年に4輪ドライバーへと転向。チームランドクルーザー・トヨタオートボデーではチームを5度のクラス優勝に導いた。www.jun38c.com/wps/


そんな三橋が'16年のダカールに向けて、一体どんな選択をするのか? それはラリーが終わってから至るところで話題にされ、本人に会えば誰もが聞かずにはいられなかった疑問だった。

なぜなら優勝を果たした直後、9シーズンに渡って所属した「トヨタオートボデー」からの離脱を発表していたからだ。その動向、あるいは進退に注目が集まるのも当然だろう。

果たしてそれが公になったのが11月4日のこと。それまで秘密裏に、しかし着実に進められていた新しい体制は2輪カテゴリーへの復帰という驚くべき内容だったのである。そう、確かに三橋はもともとライダーからキャリアをスタートさせ、その名称がまだパリ・ダカールラリーだった'01年から3度、2輪で出場。

しかも'02年には総合12位でゴールし、トッププライベーターに選ばれるという確固たる足跡を残している。とはいえ、その最前線から13年間も離れていることに加え、いわゆるワークスに近い体制で参戦していた4輪の規模とは異なり、2輪ではほぼプライベーターとしての復帰である。

それゆえ、当初は他でもないラリーのオーガナイザー自体がそのエントリーを渋ったという。
近年は競技の難易度とリスクが増しているのがその最たる理由で、とりわけ走行ステージが南米に移った'09年以降は、日本人の2輪エントラントが唯のひとりも完走していないという事実もその過酷さを裏づけている。

しかし、あえてそこに挑む三橋のチャレンジをバックアップすべく、東奔西走したのがKTMジャパンの代表を務める野口英康だった。

野口はまず、「他の国際ラリーに出場し、一定のレベルで完走すればダカールラリーのエントリーを認める」という条件をオーガナイザーに取りつけると、三橋はそれに応えるためモロッコで10月に開催されたメルズーガラリーに急遽エントリー。

ダカールラリーの前哨戦という性格を持つため多数のワークス勢がひしめく激戦にもかかわらず、総合14位という見事なリザルトで2輪の復帰戦を飾り、文句なしの実力でそのチャンスを切り開いてみせたのである。

言わばこれは、4輪の成功に甘んじることなく新しいフィールドに挑もうとする三橋の情熱と「Ready to Race」という社是をKTM本社のワークスのみならず、KTMジャパンとしても証明してみせようとする野口の真摯な思いが結実したものに他ならない。もっと端的に言えばふたりの友情と表現してもいいだろう。

'16年のダカールラリーは1月3日にペルーのリマをスタート。そして同月16日にアルゼンチンのロサリオでゴールを迎えることになる。長らく途絶えていた日本人の上位進出という夢。それを託し、見届ける価値のあるタッグである。

●KTM 450 Rally Replica
車両本体価格:¥3,500,000(税別)
エンジン:水冷4ストローク
SOHC4バルブ単気筒
排気量:449.3cc 
始動方式:セルスターター式
燃料タンク容量:約33ℓ 
半乾燥重量(燃料含まず):約140kg
*注文時には様々な仕様
追加、変更が可能。

三橋が走らせるのはこの450 Rally Replica。
誰でも手に入れることができ、かつダカールを完走する力のある世界で唯一のマシンである。

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text:伊丹孝裕/Takahiro Itami
1971年生まれ。二輪専門誌『クラブマン』の編集長を務めた後にフリーランスのモーターサイクルジャーナリストへ転向。レーシングライダーとしても活動し、これまでマン島TTやパイクスピーク、鈴鹿八耐を始めとする国内外のレースに参戦してきた。国際A級ライダー。
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