私の永遠の1台 VOL.5 MGA 1500 MkⅠ

アヘッド MGA 1500 MkⅠ

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両手の指を何度折り曲げても足りないくらい、「好きなクルマ、オートバイ」の名は挙げられる。でも「永遠の1台」を、となると悩む。

text:岡崎宏司 [aheadアーカイブス vol.163 2016年6月号]
Chapter
VOL.5 MGA 1500 MkⅠ

VOL.5 MGA 1500 MkⅠ

●MGA 1500 MkⅠ
MGA(BMC)の誕生は1955年。ツインカム・モデルやフィクストヘッド・クーペ等を加えながら1962年まで約10万台生産された。MGブランドの主力モデルとして外国でも人気を集め、1950年代ライトウェイト・スポーツカーの中心的存在でもあった。MkⅠのエンジンは1,488ccの4気筒で72馬力。最高速度は160km/h。
「永遠の5台」くらいなら、そう悩まずにすむのだが、「1台」は悩ましい!…結局、最後に残ったのが「MGA 1500 MkⅠ」と「BMW R50S」の2台。で、「2台ではダメでしょうか?」と編集部にお伺いを立てたのだが、「1台でお願いします!」とキッパリの却下。やむを得ず、MGAで決断したということだ。

決断の理由はただひとつ。「美しさ」にある。中身は、TD、TFから基本を受け継いだ鋼板ラダーフレームにリア・リジッドアクスルと古典的だが、その姿は「美しい!」のひと言に尽きる。姿というより、「姿態」という言葉を使いたいくらいだ。

艶めかしいとは言わないが、MGAの姿に、美しい女性の姿態にも準えるような感覚を僕は抱いている。

僕がMGAを手に入れたのは確か1963年頃。その時の気持ちを素直に表現すると「長年憧れていた年上の女性が、交際の願いを聞き入れてくれた」…そんな感じだった。

僕が手に入れたのは1955年型のMkⅠ。いわば8年ものである。僕が買った頃には1600MkⅡも出ていたが、僕はMkⅠに拘った。なぜかと言えば、僕の目にはMkⅠがMkⅡより美しかったからだ。

MkⅠとMkⅡの違いはフロントグリルやテールランプなど、小さなものでしかなかった。が、それらがよりシンプルなデザインのMkⅠが、僕には「絶対の存在」だったのだ。

僕のMkⅠはイングリッシュ・ホワイトのボディに、黒のトリム。ワイヤスポーク・ホイールだったが、タイヤはホワイトリボンではなく黒にした。その方が「姿態の美しさ」はより際立つと思えたからだ。

コクピットも美しかった。

ワイアスポークのステアリング・ホイールも、ダッシュボードも、華奢なノブのシフトレバーも…みんな好きだったし、美しく見えた。 

惚れた弱みなのだろうか?

走りに関してはその限りではない。

ハンドリングは素直でコントロールし易かった。が、中速域のレスポンスこそよかったものの、パワーも加速も平凡。MGAの魅力と価値は間違いなく姿形に集約された。

MGAの価格は確か104万円。学生の身で大借金をした。すでに結婚もしていたが、親と同居だったので財布は空でもなんとかなった。でも、小遣いがまったくない、そこで、日比谷のフルーツパーラーで夜のバイトをした。MGAに惚れたおかげで僕はフルーツパフェが作れる!?

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text:岡崎宏司/Koji Okazaki
1940年東京生まれ。日本大学芸術学部在学中から国内ラリーに参戦。卒業後は自動車雑誌の編集者となる。
後に自動車評論家として独立。現在もモータージャーナリズムの第一線で活躍している。
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