WRCに復帰するトヨタ

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トヨタは2015年1月末、WRC(世界ラリー選手権)への「復帰」を豊田章男社長自らが高らかに宣言。2017年からワークスチームとして、ヤリス(日本名ヴィッツ)でWRCに参戦することをアナウンスした。それから1年以上が経過し、いよいよカウントダウンを開始すべきフェイズに突入した。

text:古賀敬介 [aheadアーカイブス vol.161 2016年4月号]
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WRCに復帰するトヨタ

WRCに復帰するトヨタ

トヨタのWRC参戦準備は、もともとドイツのモータースポーツ子会社であるTMGが進めてきた。かつてTTEという名でWRCのチャンピオンチームとなり、その後TMGと組織名を変え、ル・マン24時間レース出場やF1参戦で中心的な役割を果たしてきた。

そして、F1の撤退後に水面下で粛々とWRCマシンの開発を進め、昨年そのプロジェクトが正式に認められ「WRC復帰」と相成ったわけである。

しかし、その後マシンの開発およびチーム体制に大きな変更があり、元WRC王者のトミ・マキネンがワークスチームである「トヨタ・ガズー・レーシングWRCチーム」の代表に就任。彼は、母国フィンランドを拠点とする開発センターを新たに立ち上げ、自分たちで新しいラリーカーを開発することを決めた。

開発の中心がドイツからフィンランドに移された最大の理由は、豊田社長をはじめとするトヨタの経営トップがマキネンの能力に惚れ込み、彼と一緒に仕事をしたい、マキネンのノウハウをトヨタのクルマづくりに活かしたいと考えたこと。

TMGは引き続きエンジンの開発を担当し、車体はマキネンのチームが手がけるという分業体制だ。普通に考えれば、立派な施設があるTMGを車体開発でも使わないのはもったいない気がするが、トヨタのトップは「マキネンと仕事をする事によって得られるものを大切にしたい」という考えで、方向転換を実施した。

社長自らがチームの総代表をかって出るなど、トヨタはかなり真剣にWRC参戦に向けて取り組んでいる。トヨタほどの会社規模と潤沢な予算があれば、通常は成功間違いなしとなるはずだ。

しかし、不安要素がゼロというわけではない。マキネンに大きなチームの運営経験がないこと、マシンの開発が全体的にやや遅れ気味であること、そして現時点でトップドライバーとの契約ができていないことなど、いくつか憂慮すべき点が存在するのは事実である。

今年2月、来日したマキネンは「準備は順調に進んでいる。3月中旬(*後4月に変更)にはテストカーの第1号車をシェイクダウンし、その後テストを集中的に行っていく」と、自信を示した。ドライバーとして過去4回世界の頂点に立ったマキネンが、チーム運営においても同等の能力を発揮することを、期待したい。
▶︎起用ドライバーには、ユホ・ハンニネン(元ヒュンダイワークスドライバー)やカイ・リンドストローム(マキネンやキミ・ライコネンの元コドライバー)などが噂されている。注目のドライバー陣は、今年の秋以降に発表される予定だ。

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