埋もれちゃいけない名車たち vol.45 アルピーヌのターニングポイント「アルピーヌ A310」
26ページにもあるとおり、名門アルピーヌの復活がやっと秒読み段階まで来た。すでに公開されているモデルは現時点ではあくまでもコンセプトカー扱いだが、ほぼそれに近いかたちでの2017年の発売も発表されている。
text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.161 2016年4月号]
26ページにもあるとおり、名門アルピーヌの復活がやっと秒読み段階まで来た。すでに公開されているモデルは現時点ではあくまでもコンセプトカー扱いだが、ほぼそれに近いかたちでの2017年の発売も発表されている。
text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.161 2016年4月号]
御存知の方も多いと思うけど、〝アルピーヌ・ヴィジョン〟と呼ばれるそのクルマは、ラリーの世界で猛威を奮った〝A110〟を現代流に再解釈し、最新のテクノロジーをもって開発が進められているものだ。
スタイリングもA110の姿が巧みに再現されているし、公式映像や写真もA110と並んでいることが多い。それはそれでアルピーヌ・ファンとして嬉しい。が、ちょっと寂しく感じられることもある。
それはA110に続く後のモデルが、綺麗さっぱり忘れ去られちゃってるような現状。アルピーヌは次のモデルから路線を変更したようなカタチになり、ファンの好みと合わなかったのか次第に先細りになってしまったという流れもあったけど、スポーツカーあるいはGTカーとして魅力的であるのも確かなのだ。
アルピーヌ衰退のきっかけとなったと目されているのは、A110の後継として1971年にデビューした、A310。リアエンジン、鋼管バックボーンフレームにFRPボディと、基本構成をA110から引き継いだモデルで、可憐で流麗だったA110とは異なる前衛的かつ未来的なスタイリングが特徴だった。
そしてもうひとつの特徴は、スパルタンなスポーツカーだったA110と異なり、時代の流れに沿ったラグジュアリーで快適な2+2のGTカーとしての性質が与えられていたことだった。
そのため車重はA110から100㎏以上も重くなり、アルピーヌならではの鋭さと俊敏性が影を潜めてしまった。エンジンは当初は1.6リッターの4気筒だったから、アンダーパワーの誹りも受けてしまった。
後年にはエンジンをV6に改め、最終的には2.8リッターで193馬力を得て、販売も少しは伸びたが、〝A110とは違う〟という点ばかりがクローズアップされ、大きく浮かび上がることはできなかった。ポルシェ911並みのパフォーマンスを手に入れていたというのに……。
生産中止となってしばらくして、4気筒モデルにもV6モデルにも試乗したことがある。A110のような敏捷さは確かに薄いけれど、決して遅いクルマじゃないし、そのまろやかささえ感じられるフィールとA110には望めなかった直進性から、大切な人とどこまでも素速く走っていける、新しい地平を目指していたことがありありと解るものだった。
新型アルピーヌは、おそらくそうしたGT性能さえ軽々と持ち合わせているだろう。だからこそ逆に、時代に翻弄されたA310の儚い美しさが、強く心に染みてくるのだ。
A310は、小型軽量スポーツカーだったA110に代わる次世代のアルピーヌとして開発された。基本構成をA110から受け継ぎつつ、速くて快適なグランドツアラーへと性格が改められた。
GT性能は格段に向上したが、軽くて敏捷性に優れたA110のイメージとのギャップが大きく、1971年から1984年までの間に1万2,000台弱が作られたに過ぎない。
が、その前衛的なスタイリングは今も評価が高く、6つの角形ランプをズラリと並べたフェイスを持つ初期のモデルはコレクターズアイテムになっている。このA310からアルピーヌはGT色を強め、V6GT、A610へと続いていく。
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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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