F1ジャーナリスト世良耕太の知られざるF1+ vol.15 18歳、初優勝の衝撃

vol.15 18歳、初優勝の衝撃

アヘッド マックス・フェルスタッペン

▶︎トロロッソの役割は、若手ドライバーを発掘して育て、姉妹チームであるレッドブルに送り込むこと。つまり、トロロッソが2軍ならレッドブルは1軍の関係。’14年に19歳でトロロッソからデビューしたD・クビアトは’15年にレッドブルに昇格していた。

ところが、’16年はシーズン序盤の走りが精彩を欠いたこともあり、異例とも言えるシーズン中のトレードを実施。結果、フェルスタッペンが1軍に昇格したわけだ。移籍1戦目での優勝は、実力だけでなく運も備えていることを証明した。


1997年9月30日生まれのフェルスタッペンが2015年にF1デビューを果たしたときの年齢は17歳だった。その前年にヨーロッパF3に参戦しただけ(年間3位)でF1にステップアップ。

2年前までカートに乗っていた「子」が世界の頂点であるF1にやってきて、参戦2年目には優勝してしまったのである。

ベテランは肩身が狭くなってしまうが、フェルスタッペンを追いかけた末に2位に入った現役最年長ドライバー(1979年10月17日生まれの36歳)のK・ライコネン(フェラーリ)は、「僕は彼のお父さんと一緒にレースをしたことがある。それを考えると恐ろしいね。でも、これがF1さ」と淡々と話した。

今後、フェルスタッペンが打ち立てた記録を破るのは、かなり厳しくなった。というのも、F1はドライバーの低年齢化に歯止めをかけるため、年齢制限を導入したからだ。

2016年以降、F1ドライバーになるには「18歳以上であること」「自動車運転免許を持っていること」「最低2年間のフォーミュラ参戦経験があること」などの条件が定められたのだ。

フェルスタッペンのように17歳で免許も持たず、かつフォーミュラの経験が1年しかなくてF1にステップアップすることは不可能になった。

F1ドライバーの低年齢化を促した要素は2つある。1つは技術の進歩。もう1つは英才教育だ。かつてはカートからいくつかのフォーミュラを経験し、サーキットで腕を磨いてF1に登り詰めるのが王道だった。

ところが近年は、運転状況を高精度に再現できるドライビングシミュレーターで運転を覚えることが可能になった。この最先端の室内試験装置なら、いくらミスをしてもクルマを壊すことがないし、天候も時間も選ばない。

フェルスタッペンが移籍先のチームでいきなり好成績を残すことができたのも、事前にシミュレーターでトレーニングしたおかげである。

そして英才教育。これは今に始まったことではないが、マックスの父、ヨスは元F1ドライバーで、マックスは4歳の頃にカートレースを始めている。

トロロッソ時代にチームメイトだったカルロス・サインツJr.(1994年9月1日生まれ、21歳)の父は、WRCで2度のタイトルを獲得したラリードライバーだ。F1はコネだけでのし上がれるほど甘い世界ではないが、父親の人脈が役に立ったことは間違いない。

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text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

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