小沢コージのものくろメッセ その33 アンチグローバル作戦

その33 アンチグローバル作戦

アヘッド ものくろメッセ

これら欧米のドラスティックな変化に比べ、ロクに旧・民主党が活躍できなかった日本にはそもそも正常な民主主義というか、衆愚政治的主張を持つ対抗馬さえ出ていない気もする。傍観者的に言うと要するに今は土着の時代であり、お国柄が出た年ということになるだろう。

その視点で考えた時、そもそも日本は移民に積極的ではなく、国を守る正規軍をあえて持たない個性的な先進国。欧米のグローバリゼーション否定の段階にすら至ってない。

ところでこれを多少ゴーインに自動車界に置き換えてみると、今のトランプ体制やEU離脱のイギリスは、近年のマツダやスバルの姿勢と不思議に重なって見える。なぜなら今の自動車メーカーはほとんどがグローバリゼーション信者だからだ。

トヨタ、VW、ルノー日産、フィアット・クライスラーがくっついて登場したFCAグループを見る限り、ほとんどが規模の論理を追い、プラットフォームの共用化どころかパワートレインを一部自分のグループ外に出してまでコスト削減をしようとする。

中でも顕著なのがますます繋がりを深めるルノー日産とダイムラーグループで、スカイラインにメルセデス・ベンツの2リッター・ターボが搭載されただけでもビックリなのに、今やAクラスなどメルセデス製コンパクトカーと、日産系のインフィニティ製コンパクトの共有化は進んでいるし、先日はメルセデス傘下のスマート・フォーフォーと中身を共有する3代目ルノー・トゥインゴまで登場した。

まさかフラッグシップのSクラスをルノーに受け渡したりはしないだろうが、その規模と生産効率を追う戦略はトコトン、限界まで極まっている。

一方、マツダはそれこそアメリカの経済大異変であった'08年のリーマンショックをきっかけに、フォード傘下から正式に独立。年間150万台生産程度の小さな規模とはいえ、プラットフォームからエンジンからデザイン哲学からディテールまでオリジナル技術化。

一部にトヨタのハイブリッド技術を貰っているがメインビジネスではなく、ターゲットはグローバルだが、物作り戦略はグローバルに完全に背を向けている。ある意味日本の職人的と言えなくもない。

スバルもそうだ。プラットフォームはもちろん、いまどきエンジンまでフルオリジナル。というか独自の水平対向エンジンを捨てたら、スバルがスバルでなくなってしまうんじゃないかという依存ぶり。他との共有化は現状ほとんど考えられないだろう。

その上、マツダもスバルも今、物凄く業績がいいのだ。台数はトヨタやVWにまるで敵わないが、個性や利益率では一部で大手アライアンスを上回ると言ってもいい。

もちろんこの先の不安も大きいが、現状ここまでアンチグローバル作戦が成功するとは思わなかった。もしやトランプ体制も意外と上手くいってしまうのかも? と思う今日この頃なのである。

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text:小沢コージ/Koji Ozawa
雑誌、ウェブ、ラジオなどで活躍中の “バラエティ自動車ジャーナリスト”。自動車メーカーを経て二玄社に入社、『NAVI』の編集に携わる。現在は『ベストカー』『日経トレンディネット』などに連載を持つ。愛車はロールスロイス・コーニッシュクーペ、トヨタ iQなど。

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