ひこうき雲を追いかけて vol.51 ファンタジー

アヘッド ひこうき雲

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先月号の女性版特集ではみなとみらいの8つの輸入車ディーラーを紹介したが、恥ずかしながら、ロールス・ロイスについてはまったく予備知識がなかった。だからかどうか、このクルマのもつ世界観にすっかり興味を惹かれてしまった。

text : ahead編集長・若林葉子 photo : 長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.166 2016年9月号]
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vol.51 ファンタジー

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そもそも 「ゴースト」「ファントム」「レイス」って、もちろんこういう名前をつけるようになった由来はあるわけだが、いずれにしても全部この世に存在しないものの名前が付いてるなんて、冗談みたいとも思うし、洒落ているとも思う。

取材から少しして、再び広報の女性と話をする機会があった。自分の誕生日の星空をオーダーできるというスターライトヘッドライナー(オプション。車内の天井のレザーに千本を超えるLEDを手作業で編み込んだもの)について、「私なら自分の誕生日じゃなくて、結婚相手と巡り合った日とか、子供の生まれた日とかにするかも。ヘッドライナーの他にもそういう不必要なニーズがいろいろありそうですね」と何気なく言ったら、彼女は意外なところに反応した。

「不必要なニーズ」  この言語矛盾を彼女は面白いと思ったようである。

彼女の話では、例えば後部座席の窓ガラスを自在にスモークにしたりクリアにしたりすることが技術的に可能だったとしても、あえてカーテンにする方が今の時代は贅沢なのではないかと考えてみたり、スポーツカーはパドルシフトが主流になってきているが、ドライバーに考えさせることになるから、やはりオートマチックがいいのではないか、というふうに考えたりするのだそうだ。

ロールス・ロイスのオーナーは世の中の大半の人とは違っているわけで、私達からすると無駄だったり不必要と思うものの中に彼らのニーズはあるかもしれないのだ。

と言っても、世界が違いすぎて私には全然分からない。分からないが、とても面白いと思う。どんな人がどんな暮らしをし、何を求めてロールス・ロイスに乗るのか。想像するだけで楽しいではないか。

「レイス」が発売されてから、ショーファーカーとしてだけでなく、ドライバーズカーとしてもロールス・ロイスは人気が高まっているという。因みにみなとみらいのショールームはフェラーリと隣り合っており、フェラーリを買いに来たついでにロールス・ロイスを買う人もいるらしい。

フェラーリにもロールス・ロイスにも同じ価格帯のクルマはあるが、フェラーリとロールスロイスはやはり全然違う。ロールス・ロイスは実際に存在はするが、車名が象徴するように私にとってはどこかファンタジーの世界。それがまたロールス・ロイスの強い引力なのだと思う。

気軽に広報車に乗ってみてくださいと言ってはくださるが、万が一を考えると、今のところ広報車を借りる勇気はない。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。
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