Rolling 40's Vol.96 贅沢は敵

Vol.96 贅沢は敵

Rolling

船は6時間で7千円ほどのモーターボートから、6時間で8万円ほどの小型クルーザーまで何種類もあり、用途や予算によって使い分けられる。

私たちがよく借りる船はヤマハの「S-QUARO」という10人乗り30フィートの小型クルーザーで、新艇では1200万円のプライスである。これを実際に借りるには6時間で5万円弱というレンタル代と、レンタカー同様、使っただけの燃料費が請求される。

これを安いと思うか高いと思うかの判断は分かれるが、実際の遊びの例を挙げると、三浦半島の佐島マリーナから出港し、三浦半島の風景を眺めながら城ケ島の橋の下を通って、そこから東京湾を横断して館山まで向かう。

そして館山周辺の入り江に錨を下ろして水遊び。船の上から夏のビーチを見渡していると、気分はちょっとした雲上人だ。船を運転しない人はシャンパンを飲んでも良いだろう。お腹がすいたら有料係留が可能な近くの漁港に向かい、上陸したら漁港の海鮮料理屋でグルメ大会。再び船で東京湾を横断して、三浦半島の入り江で釣りを少し楽しんだらタイムアップという感じである。

大人、6・7人で遊んで飯代と飲み代を入れて1人1万5千円以下の概算だ。もっと小さなクラスの船を2万円くらいで借りて、少人数で釣りだけの目的に使うことも楽しいだろう。

実際にこのクラスのクルーザーを1000万円以上で買って、都内近郊のマリーナで維持費を含め年150万円以上を支払いながら維持していくことは普通の人では難しいが、このようなレンタルシステムなら、海の遊びも、大人のお小遣い範疇で可能であろう。

数回使ってみて考えたのは、小型クルーザーをレンタルして遊ぶことと、そのオーナーであることの差とは何なのかということだ。クルマなら1000万円払ったら毎日使い倒してあちこちで見栄も張れるが、クルーザーを実際に使ってみると、海の上では暖かい季節以外は修業場となってしまうし、ウミネコに見栄を張っても仕方がないだろう。

数百万円ほどの中古艇も沢山あるが、かなり高額なマリーナ係留代を払い続けることは並大抵ではない。レンタルクルーザーで泡沫の夢を見るくらいでちょうど良いのだ。自費で買う気になる理由はどこにも見当たらない。

しかし、この遊びのことをニュージーランドに住んでいる知人に話す機会があった。彼曰く、ニュージーランドでは普通のサラリーマンが、中古のクルーザーやヨットを百万円以下で購入して、自分や仲間たちと修理しながら遊んでいるという。マリーナに停めておくのもそれほど大きくなければ月極数万円もしないくらいだという。

オートバイで遊んでいても思うことだが、その手のレジャーに対するコストが日本はどうして「バカ高い」のだろう。

こういう話になると日本は狭いからという答えもあるが、ニュージーランドは決して国土は大きくはない。世界201国の広さランキングで日本は61位で、ニュージーランドは75位、またドイツやイタリアよりも広いのである。日本が狭いという認識はアメリカや中国、ロシアと比べた場合であって、日本はそれほど狭くはないのである。

ただ日本の人口密度のランキングはいきなり24位となってしまい、ニュージーランドは159位である。ちなみにアメリカは140位である。

なるほど、この人口密度というところに土地不動産の値段が大きく関わっているということなのだろう。土地不動産が経済に大きく関わっている限り、この手の遊びが庶民感覚で楽しめる状況になることはないかもしれない。

またこの手の遊びに対して「贅沢品」という冷たい視線があるのも事実であり、それが積極的な価格破壊につながらないのだ。

ハッキリ言って遊び用のクルーザーなんてものは、神様が意地悪で明日この世からなくしてしまっても私は大して困ることはない。それくらいに特殊な趣向品だ。

だがそれを金持ちだけの遊びとして「隔離」している状況に対しても、日本特有の気味悪さを感じる。海に囲まれているお国なのである、もっと普通の人が普通のお小遣いで、船遊びをしても良いじゃないかと思うのは間違った感覚だろうか。

だがクルマの車検然り、日本人特有のお任せ主義では海の事故が多発するのは目に見えたことであり、そういうことを含めて考えると、やはり海洋レジャーは特別なモノとしておいた方が、現状では「無難」という冷めた考えもある。

そう考えると、やはり「車検」制度が日本人の甘ちゃん気質の根幹をなしているのだと、暴論を吐きたくなる。

自分でちゃんと整備しないと、自分の大事な家族が死ぬようなことが起きたり、他人を傷つけるような事態に陥る。だからしっかり自分で管理する、または意識的にコストを払う。

去年仕事でアメリカに行くことがあったのだが、郊外の大きなスーパーマーケットで、日本ではカー用品屋でも扱わないようなエンジンの主要部品やブレーキパーツを棚売りしていた。そんな光景を見ると、やはり幌馬車で大陸を渡った遺伝子は凄いと思ってしまう。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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