Rolling 40's Vol.98 レガシィ

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Rolling

旧いバイクを磨いては愛でていると、人はどうして古物を大事にし続けるのかと考えることがある。

私の場合はそれがたまたま趣味であるバイクなだけで、人によってはそれが掛け軸であったり陶器であったり名刀であったりする。もちろんそれ以上に遡り、数千年前の遺物や遺跡を大事にすることもあるだろう。また所持しなくとも、そういう多くの時間が過ぎ去った「造形物」に接することを好む方も多いはずだ。

しかしこの感覚は若い時には理解できないものであるような気もする。若い時は受験のために仕方なしに暗記した歴史も、本心ではまったく興味がなかったし、神社仏閣や古美術にも全く食指が動くことなどなかった。

最新であること以外は興味がなく、また反対に少しでも古くなると卑下することもあったくらいである。

そういう若者の感覚を理解はできる。また、そういう時期はそのくらいでなければいけないとも思う。だが48歳という、男の人生においてとても意味のある時期に達した今、最新ということはかなり大事ではあるが、最重要ではないという気持ちになっている。

最新を手に入れるのは容易いことだと知ってしまったからだろう。ほぼすべての事象に共通すると思うのだが、最新であるということは、意外と簡単なのだ。だがその輝きを維持し続けるということは、その何倍も大変なのである。

同じように、私の旧いバイクは30年前に世界最速という使命を持ち、実際にそれを成し遂げてきたマシンである。そして私は多大なるコストと愛をもって、今現在もその性能をそのままに維持している。

だが2017年にやって来る最新の電脳マシンと比べると、30年前の走行性能は比較にならない。時代の進化は早く、私のマシンの世界最速の数値などは昔取った杵柄的なもので、実際に2台が走ったならば勝負にもならないだろう。

だが、この勝負、今から30年たったらどうなのだということも考えなくてはならない。その2017年式のマシンが2047年になった時に、今と同じように走れるほどオーナーの愛情を受け続けられているかということだ。

それは言い換えると、30年以上も愛されるような工業製品として、メーカーが設計しているかということでもある。白物家電のように、メーカー自体が数年使ってポイしてくださいという設計をしているか否かの話である。

今の最新式のマシンにそれがあるのかと考えると、疑問を感じる部分が幾つかある。性能は凄いが、最新式の全自動洗濯機のように、10年もしたらその全てが陳腐化していそうな気がして仕方ない。

これは四輪にも言えることで、とくにメーカーのフラッグシップとも言えるような車種ほど、型遅れになると、デザインから何から、それ自体が持つ存在感全てが陳腐化するケースが多い。

だから最新マシンに飛びつくことも最近では少なくなった。少しズルいやり方だが最新マシンが最新でなくなったころに、その価値が見えてくるということだ。これはメーカーからしたら一番嫌な客で、申し訳ない限りであるが、バイクに限っては16歳から唯一飽きずに続けているスタイルなので、この先もこだわり続けたい。

生き方にも言えることで、自分のやっていることが、白物家電的なものなのか、それとも流行り廃りや時代の波を超えていく可能性があるのか考える必要があるだろう。どちらが良い悪いではなく、それを確信犯的に分かっているかいないかだろう。

だがそれはとても難しい。自分が最新である時に、自分がいつ陳腐化する運命なのかなどと分析するのは困難である。また己が時代を乗り越えていくと自負することも、そう簡単にできるものではない。

私は自分の旧いバイクに対して擬人的な感情を持ってしまうことがある。

時代を超えた旧いモノを愛でるとき、懐かしさや過去への興味以上に、無数の戦いを潜り抜けてきた戦士に対するのと同じ敬意を持つようにしている。彼は30年前の世界最速という宿命を背負い続け、年齢を重ねて時代に飲み込まれそうになったときもあるが、それでもいまだに世界最速というプライドを失っていない。

だからこそオーナーが多大なコストを払ってでも大事にし続けたくなるのだ。御伽話のようであるが、自分自身もいつかは他人からそんな人間に思われたい。

その理屈で考えると、自分の才能や努力は大前提であるが、それ以上に他者から大事にされることが重要なのかもしれないと思う。愛でてもらうことも才能のひとつなのだ。

興味のない方には意味が分からないかもしれないが、旧いバイクを通して見えてくる生き方がある。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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