東京エスプリ倶楽部 vol.10 ダッチ・オーブン クックオフ

アヘッド 東京エスプリ

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5月13、14日の土日、JDOS(Japan Dutch Oven Society)主催の第40回「クックオフ」に、自転車仲間でもあるSさんに誘われて初めて参加した。ダッチ・オーブンというのは、鋳物製の鉄鍋のことである。

text:今尾直樹 [aheadアーカイブス vol.174 2017年6月号]
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vol.10 ダッチ・オーブン クックオフ

vol.10 ダッチ・オーブン クックオフ

鉄鍋は日本を含め、世界中にいろいろあるみたいだけれど、JDOSではキャストアイアン調理器具のアメリカNo. 1メーカー、ロッジ社のそれを中心に据えている。

というのも、JDOSを1996年に設立した菊池仁志さんがカウボーイ修行に行ったネバダで初めて見て感動したのがロッジの鉄鍋で、これを日本に伝え広めたいと思い立ったからなのだった。

ぶ厚い鋳鉄製のダッチ・オーブンは熱がじっくり伝わり保温する。キャンプ中の焚き火の上に鍋を置き、野菜やら肉やらを放り込んでおけば、あとは「鍋が調理してくれる」。というのが菊池さんの説で、焼く、煮る、蒸す、揚げる、なんでもできちゃう、西部開拓時代以来の万能鍋なのだった。

菊池さんに私が初めてお会いしたのは、菊池さんがJDOSを正式に設立した頃のことだったと記憶する。鉄鍋おじさんがつくる料理はトリの丸焼きとかローストビーフとか、なんでもうまかった。私も憧れて、ダッチ・オーブンと、それを吊るす三脚をセットで買った。

しかるに私が買った鉄鍋は奥さんの不興を買うものだった。家のガスコンロにのせるにはでかくて重く、使い終わった後には空焚きして水を飛ばし、食用油をサビ止のために塗っておかねばならない。

最初、焼きりんごをつくろうと思ってやってみたら、火加減がまったくわからず、りんごがジャムみたいにクタクタになって大失敗。私の代わりに鍋を洗って油を塗り、押入れに放り込んでくれたのはほかならぬ私の奥さんでした。かれこれ20年ぶりにそれを引っ張り出し、洗ってサビを落とした上に油も塗ってもたせてくれたのも奥さんです。

ともかく私はそれをルーテシアのトランクに積み、勇躍、開催地である相模湖のキャンプ場へと出かけた。

集まってきたクルマの素晴らしかったこと! 菊池さんのブルーメタリックのランドローバー・ディフェンダー、どなたか知りませんけど、ディフェンダーのキャンパー(ルーフが上に開いてベッド・スペースになる)とかジープ・ラングラーとか、ハマーH2とか初代レインジ・ローバーとか、サーブ9-3なんてのもあった。

土曜の夜は前夜祭で、私はSさんがつくってくれた料理を大いに食べて大いに飲み、焚き火の近くで気持ちよくウトウトしていると、だれかがテントまで連れて行ってくれた。翌朝、鳥の鳴く声で目覚めると、テントの生地を通して太陽の光が入ってきていて、森のさわやかな空気が満ちていた。鳥の鳴き声はさまざまで、オーケストラみたいだ。

日曜日が「クックオフ」の本番で、各自、自慢の料理をダッチ・オーブンでつくって、仲間たちに一皿供する。

20年ぶりに引っ張り出したダッチ・オーブンで私はローストビーフをSさんの指導の下、いわれるままにつくったけれど、それをつくったといえるのかどうか。私の鉄鍋はいまもルーテシアのトランクに積んだまま。私にとってダッチ・オーブンは、好きだけど、めんどくさいもののひとつである。

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。
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