街のバイク屋がなくなる日 VOL.1

街のバイク屋がなくなる日 VOL.1

アヘッド バイク走行

そして今年2月、ホンダモーターサイクルジャパンも国内販売網の再編計画を発表した。現在、ホンダドリームを筆頭に5チャネルある販売店網を、全モデルを取り扱う「ホンダドリーム」と、250㏄以下を取り扱う「ホンダコミューター」の2チャネルにするものだ。

この施策は2018年4月の開始を予定しており、店舗数はそのままにドリーム150店舗、コミューター5350店舗にするとしている。

カワサキとホンダの施策が意図するところは同じで、専売ディーラーを増やすことで「ブランド力の強化」と「顧客満足度の向上」を目指すことにある。

これは何もカワサキやホンダが先鞭をつけるものではない。

海外バイクメーカーの販売店は、日本法人設立によってすでにそうした専売店ネットワークを作り、専門知識を持ったスタッフによる統一されたサービスを提供している。もとより、クルマは国内メーカーもすでにそうした販売網を構築している。

欲しいクルマのメーカーディーラーへ行って新車を買う。当たり前の話だ。それを踏まえれば、このたびの販売店網再編は遅きに失しているともいえる。

では、なぜ今なのか。

まず考えたいのは、バイクユーザーの中心が40代中盤〜50代という中高年層である事実だ。さらに、少子高齢化が進み、ただでさえ若年層が少ないうえ、リスクやミスを回避することこそスマートとされ、自己責任を強く問われる現代の風潮、いわゆるバイク離れである。

これが何を意味するかというと、あと10数年も経てばバイクユーザーの中心は60〜70代になって半減し、進んだ少子化によって若年層は減り続け、ますますバイクに興味を示さなくなるという未来予測だ。

これは販売店についても同じことがいえる。併売店は規模の小さな個人経営や家族経営が大部分を占めるが、後継ぎがいない、あるいはあえて継がせない販売店も多い。もちろん経営者の高齢化も進んでいくから、10年後に販売店の数が減少していることは明らかだ。

つまり、日本のバイク市場は縮小していく一方であるという予測が成り立つ。おそらくメーカーは10年以上前から予測していただろう。

また、近年のバイク販売台数増加を支えたのは、リターンライダーと新規免許取得者だ。彼らはバイクの知識と情報に乏しく、ゆえにひとつのメーカーの看板だけを堂々と掲げる専売ディーラーは安心と信頼の指標となる。

アヘッド バイク走行 横

今、そしてこれから重要なのは、既存ユーザーに2台目3台目を買わせるよりも、リターンライダーや新規免許取得者に1台目を買わせることだ。販売店の専売化は、メーカーとしても新規顧客獲得に有利であり、さらに販売の計画と管理を容易にする。

メリットはメーカーとユーザーの両者に生ずる。販売網再編は、一刻も早く導入すべき施策だったはずだ。

それがなぜこの時期になったのかといえば、ようやく着手できる体制が整ったから、と考えるのが妥当だろう。

2006年の排ガス規制、2010年の騒音規制への対応が遅れ、各メーカーのラインアップは激減。2006年のバイク駐車問題では、都市部の販売店が相次いで廃業する事態となり、さらにリーマンショックが追い打ちをかけた。

業界内では、某メーカーがバイク生産から撤退するという噂が流れるほど、国内のバイク市場は落ち込んでいた。つまり販売店網再編どころではなかったのである。

それが近年、中国とインドを中心としたアセアン地域における販売台数の成長があり、それに伴って実現した小〜中排気量車のグローバルモデルが成功した。これを受けて日本国内のラインアップも再編成でき、販売台数が増加したことで国内市場は回復傾向となった。

安定した市場にはまだ遠いが、世界全体の景気状況すら予断できない。やるなら今しかない。この機を逃すと、次がいつ巡ってくるかは誰もわからないのだ。

しかし、問題も当然ある。

カワサキとホンダ、それぞれの専売ディーラーの運営は、当面はメーカー直営となると考えられる。

なぜなら専売店資格の内容が厳しいからだ。コーポレートアイデンティティ(CI)を満たした専売店とするには、一定以上の広さを持つ敷地面積に加えて、店舗名の統一、店舗の外装および内装の統一、店舗の単独化(同一敷地内での他メーカーの併売禁止)、フルラインアップ展示などがあり、改装であれ新築であれ、億単位の出資が必要となる。

また、経済的事情をクリアしたとしても、都市部においては土地の確保が困難だ。

前述したような家族経営の小規模販売店はもちろん、中規模の販売店でさえ対応はむずかしい。すでにドリーム店を展開しているホンダはともかくとして、都内23区にある34のカワサキ販売店のうち、再編に対応して専門店となれる販売店はわずか2、3店舗程度ともいわれている。

バイク販売店を取り巻く事情は大きく変わりつつある。大資本を持つ企業がバイク販売店を経営する時代になったのだ。

では、町の小さなバイク屋は消えてしまうのだろうか。次回から2度にわたって探っていく。

----------------------------------------------
text:山下 剛/Takeshi Yamashita
1970年生まれ。東京都出身。新聞社写真部アルバイト、編集プロダクションを経てネコ・パブリッシングに入社。BMW BIKES、クラブマン編集部などで経験を積む。2011年マン島TT取材のために会社を辞め、現在はフリーランスライター&カメラマン。

アヘッド ロゴ

関連キーワード

この記事をシェアする

最新記事

     
アヘッド Car & Motorcycle Magagine ahead archives