Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.3 家族というサポーター

アヘッド Letter From Mom

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並んで布団に入りながら、「明日は飛行機に乗って、九州のパパのところに行こうね」と言うと、2歳になったばかりの娘は胸に抱いたミッキーマウスに同じ言葉を投げかけ、「たのしみねー」なんてお姉さんぶっていた。少しは分かってきているのか、いないのか。夫がレースシーズンに入ると、我が家の家族旅行の行き先は日本各地のサーキットばかりになる。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.174 2017年6月号]
Chapter
Vol.3 家族というサポーター

Vol.3 家族というサポーター

初めて娘をサーキットに連れて行ったのは、生後2ヵ月の頃だった。東京から近く、通い慣れた富士スピードウェイだったという心の余裕もあったが、夫のレース結果を家で心配しながら待っているくらいなら、いっそのこと応援に行ってしまえッ、という私の無鉄砲な性格がそうさせたように思う。

思いのほか周囲は温かく迎えてくれて、ピットのベンチでオムツ交換をし、授乳はケープをかぶって車内で済ませ、眠ったらベビーカーでゆらゆら。それで味をしめてしまった私は、スポーツランドSUGO、ツインリンクもてぎ、十勝スピードウェイ、鈴鹿サーキットに岡山国際サーキット、筑波サーキットと足を伸ばした。

そして今回、昨年は熊本地震の影響でレースが中止になってしまった大分県のオートポリスへ、1年越しでようやく訪問が叶ったのだった。

でも、こうして乳児の頃から応援に行けたのは、86/BRZレースだったからでもある。というのも、サーキットといえば爆音のイメージがあるからか、SNSなどで「お子さんの難聴は大丈夫ですか」とたびたび指摘を受けた。

86/BRZレースはノーマルマフラーが義務付けられているので、レース中でも通常の排気音とさほど変わらず、子どもの耳に優しい。ただ念のため、サーキットのショップで売っていた子ども向けの防音用ヘッドセットをつけてあげたり、ほかにも日よけの帽子やサングラスなど、思いつく限りの防護策はとってきたつもりだ。

今では娘の顔見知り(?)も増えて、声をかけてもらうと嬉しそう。スタート前のグリッドでは、夫の86をいち早く見つけて「パパぶーぶ!」と指差し、運転席の夫に「がんばって」と手をタッチするのも忘れない。1歳くらいまでは決勝中に眠ってしまうことが多かったが、最近はモニターの前に陣取って「パパぶーぶ、はやーい!」なんてしっかり応援してくれている。

とはいえ、こんなところで娘の成長を感じるのは、やはり普通ではないのだろうし、誰になんと非難されても仕方ない親のエゴだという自覚もある。せっかく応援に行ったって、ピリピリしている夫とケンカになることもあるし、順位が悪ければ気持ちは沈む。

でも、それでも。家族の誰かががんばっている時には、結果がどうあれ一緒にいるべきじゃないだろうか。泣いて笑って、すべてを共有するのが家族じゃないだろうか。父の草野球や母のコーラスを応援した幼い日を思い出しながら、私は私なりの家族のカタチを作ろうとしているのかもしれない。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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