埋もれちゃいけない名車たち vol.56 日本人に官能を植え付けた存在「アルファ ロメオ・155」

アヘッド アルファ ロメオ・155 街

※この記事には広告が含まれます

〝官能〟という言葉を僕の頭の中でクルマに置き換えると、〝アルファ ロメオ〟という言葉になる。もちろんそれは、僕がアルファのユーザーであることと無縁ではない。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.172 2017年3月号]
Chapter
vol.56 日本人に官能を植え付けた存在「アルファ ロメオ・155」

vol.56 日本人に官能を植え付けた存在「アルファ ロメオ・155」

いきなり結論じみた話で恐縮だけど、エンジンの美しいサウンドやフィールなのか、ファンなハンドリングなのか、麗しいスタイリングなのか、あるいはその複合技か、いずれにしてもアルファ ロメオは全てが何らかの〝気持ちよさ〟を感じさせるように作られている。

スピードの多寡に関係なくいかなるときでも官能的であるから、僕はアルファを選んだのだ。仕事のための移動やコンビニへ買い物にいく道すがらですら、クルマと情を交わしてるような感覚に溺れられる。そんな〝乗用車〟は他にない。

アルファ ロメオがそういう存在であることは、昔はクルマ好きの中でも一部でしか知られてなかった。

数値化できる部分じゃないから、体験のない人にはなかなか伝わらなかったのだ。けれど1992年に日本に上陸した〝155〟以降は様相が変わり、〝アルファ ロメオ=官能的〟という図式が次第に浸透していった。

155は目鼻立ちの少しクッキリした、どちらかといえばボクシーなスタイリングをしたミドルクラスの4ドアセダン。これが、それまでのアルファ ロメオにはなかったくらいの人気モデルとなり、かなり売れた。

日本で輸入車人気がヒートアップを続けていた時期と重なっていたのも確かだし、個性的でスタイリッシュだったことも間違いないが、何よりの起爆剤となったのはモータースポーツでの大活躍。

DTM(ドイツ・ツーレンヴァーゲン・マイスターシャフト)、BTCC(ブリティッシュ・ツーリングカー・チャンピオンシップ)といった、その頃に世界的な盛り上がりを見せていたツーリングカー・レースのトップカテゴリーで大活躍を収めたからだ。

またレース仕様にモディファイされた155は、ただ速かっただけでなく、誰もがカッコイイと認めざるを得ないスタイリングと存在感を持っていた。その強烈なイメージに惹かれたのだ。

もちろんロードカーの155は、レーシング155の驚速ともいえる速さにはまるで追いつかなかった。が、スポーティでほどほど以上の速さを持ち、実用的で家族に言い訳もできる4枚のドアを持つクルマだった。

それより何より、4気筒のツインスパーク、6気筒の伝統的アルファV6と、どちらも鳥肌モノの快音とフィールでドライバーを痺れさせてくれるエンジンを積んでいた。僕達に〝クルマの官能〟というものを植え付けてくれたのが155だった、といっても過言ではないだろう。

あの頃にはあれほどあちこちで見掛けたのに、今では絶滅危惧車のようになってしまった155。それは絶対に忘れてはいけない名車なのだ。

アルファ ロメオ・155

155は、1990年代のアルファ ロメオを代表するミドル・クラスのスポーツ・セダンである。フィアットやランチアのセダンと基本的な骨格などを共有して開発された前輪駆動のモデルで、トリノのI.DE.Aがデザインしたシャープでモダンな内外装が与えられた。

2.0Lのツインスパークに2.5LのアルファV6という現在でも名機と呼ばれる快感系エンジンを搭載、イタリア製パワーユニットの気持ちよさというものを日本のクルマ好き達に植え付ける役割を果たした。

日本では1992年から1998年まで販売が続けられ、後にやはり人気車種となる後継の156にバトンタッチした。

-------------------------------------------------
text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。

【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細