Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.1 ブレイブハート

アヘッド Letter From Mom

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週イチで娘と通っているスイミングスクールの駐車場に、いつも同じ「86」と「CR-Z」が停まっている。我が家にもある2台なので、オーナーはどんな人かなと気になるのだが、なかなかお会いできないでいる。

text:まるも亜希子 [aheadアーカイブス vol.173 2017年4月号]
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Vol.1 ブレイブハート

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といっても、同時刻に行われているのは、ベビークラスとシニアクラスだけ。2台ともチャイルドシートは着いていないから、シニアクラスで泳いでいる誰かなのだろう。スポーツカーに乗ってスイミングスクールに通う、おじいちゃんかおばあちゃん。そんな姿を想像をすると、心がほんわか潤って、ちょっぴり勇気づけられる。

娘が生まれたあと、たくさんの人に「えっ、まだCR-Z持ってるの?」と驚かれた。結婚も出産も想定すらしていなかった独身時代に買ったCR-Zは、確かに今の生活に絶対必要かといえば、そうではない。まだまだフルに働けない今、手放した方が経済的にラクになるのも間違いない。

夫が結婚前から所有していた前期型の86を、少し前に後期型に買い替えた時は、驚かれると同時に「よくそんなこと許したね」と呆れられた。ワンメイクレースに5年目の参戦をするための買い替えで、大きな出費のわりに普段の生活にはまったく役に立たない86。そんなクルマを、これからどんどん子どもに手がかかる時期に買うなんてと、冷静に考えれば当たり前の反応かもしれない。

実を言えば、何度かCR-Zを手放そうと思ったこともあったし、夫は後期型の86が発売された時点で、買い換えてまでレースを続けるのは無謀だと悟っていた。それなのに、私は踏みとどまり、夫が新しい86に手を出してしまったのは、きっと私と夫それぞれの「大切にしたいもの」を象徴し、叶えてくれるクルマだからだろうと思う。

私が今、日頃使っているのは子育て最優先で選んだミニバンで、CR-Zに乗れるのは月にわずか1、2度。でもその時間は日々の雑念を忘れ、自分自身と素直に向き合ってリフレッシュできる、かけがえのないものだ。そして夫は、レースを諦めるつもりでしょんぼりしていたのが嘘のように、再び新しい86とともに闘うゾと生き生きしている。

安全性やコストパフォーマンス、環境性能や機能の優劣は、もちろんクルマの情報として大切なこと。ただ、私がこの仕事で伝えたいのはそれだけじゃない。すべてのクルマは、人の心を動かしたり、宝物を作ってくれたり、人生の夢や目標を教えてくれるようなチカラを、何かしら持っているはず。そう信じる気持ちを再確認させてくれるのが、我が家のCR-Zであり86だ。

毎月の家計はますます綱渡り。でも私は、セレブでもなんでもない、子育てに奮闘するひとりの生活者として、身近なことからそんなクルマのチカラを感じて伝えていきたい。これからまた、読者の皆さんも一緒に楽しんでいただけたら嬉しいなと思う。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。
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