Letter From Mom 夫と子どもとクルマたち Vol.2 男の魂、女の愛

アヘッド Letter From Mom

Vol.2 男の魂、女の愛

中に入るやいなや、どどんと展示されていたドラマ『西部警察』登場のマシンたちに駆け寄り、バシャバシャと写真を撮りまくる男2人に呆然。中でも「スカイライン」をベースに特殊装備の数々が盛り込まれた、通称「RS軍団」というマシンたちを上から下から覗き込んで盛り上がっている。

しばらくポツンと放っておかれたあげく、「ちょっとシャッター押して」と呼ばれ、興奮気味で「RS-1」の脇に立つ2人をカメラに収めながら、かなり引いていた私がいた。そのうちの1人は、現在の夫である。

お土産にRS軍団グッズを買い込んで出てきた2人は、その後もスカイライン話に夢中。私はそれを聞くともなく聞きながら、「ここにもいたよ」と親友にメールを打った。というのもその少し前のこと。

彼女のご主人はロールバーが入ったR34型GT-Rを溺愛していて、「もうすぐ子どもが生まれるのに、マニュアルだし乗り心地も悪いし荷物も積めないの」とこぼしていた。

それが、急に買い替える気になってくれたみたい、と喜びのメール。良かったねと返信したのも束の間、「ひとつ新しいGT-Rに変わっただけだった。そこだけは譲れないんだって」と、冗談のような続報が届いた。

ご主人からすれば、AT免許でも乗れるデュアルクラッチだし、ノーマルだし、かなり譲歩したつもりらしい。これほどまでに男を虜にするスカイライン、恐るべし。

そんなスカイラインが、4月24日で誕生60周年を迎えたという。

思えば幾度もの苦難を乗り越えてきたその歴史には、「生みの親」といわれる櫻井眞一郎氏をはじめ、R30型のFJエンジンを開発した村崎 明氏、レースで無敵の速さを見せつけた星野一義氏など、スカイラインに人生を捧げたといっていい男たちが輝いている。そして『西部警察』や『あぶない刑事』では、正義のために命がけで闘う男の相棒として、あまりにも鮮烈な印象が残る。

小樽の一件のあとになって、もう20年近く前に亡くなってしまった義父が、ずっと愛車にしてきたのがスカイラインだったのだと知った。

夫にとってスカイラインは、失った父親との時間を埋めてくれるものでもあるのかな、と思うものの真相はわからない。いや、そこはあえて聞かずにいてあげたいと思った。まさかの買い替えに文句も言わず、狭いリアシートにチャイルドシートをつけて乗っている親友も、そう思っているのかもしれない。

スカイラインそしてGT-Rには、男から男へと託されてきた魂、女を寄せつけない硬派な生き様が宿っている気がする。でもその陰には、たくさんの女たちの愛があるんじゃないだろうか。今も18年前のスカイラインを大事に乗っている義母からも、そんな深い愛を感じるのだった。

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text:まるも亜希子/Akiko Marumo
エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集者を経て、カーライフジャーナリストとして独立。ファミリーや女性に対するクルマの魅力解説には定評があり、雑誌やWeb、トークショーなど幅広い分野で活躍中。国際ラリーや国内耐久レースなどモータースポーツにも参戦している。

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