Rolling 40's VOL.108 カスタムの果て

VOL.108 カスタムの果て

アヘッド ROLLING 40's

バイクもクルマの改造も10代のころから当たり前のように行ってきた。もちろん良い結果もあったし酷い結果になったことも多々ある。しかしそれでも改造するという気持ちが失速したことはないし、これからも乗り回す乗り物は全て改造するつもりでいた。

しかし今回のパンク騒ぎで、久々にノーマルサイズに戻してアライメントをとったわが愛車の乗り味には度肝を抜かれた。

「明らかにノーマルの方が良い」のである。

もちろん見てくれや、高速域での安定性は大きく太いサイズのホイールとタイヤに分がある部分はある。しかし普通に街乗りをするぶんには、明らかにノーマルサイズの方が車体とのバランスが取れているということが伝わってきた。

ノーマルから大きなサイズに交換したときは、ダイレクトになった感触や高速での安定性から、やはりタイヤは大きく太いのが「正義」だと思ったのだが、ノーマルに戻すと、その「正義」が揺らいだのだから不思議なものである。

オーバーサイズを入れていたということについて再考した。確かにそのサイズのタイヤを動かすためのパワステ機構は想定外だろうし、足回りのブッシュの太さなどもノーマルを想定しているのは分かりきったことだ。

だがバイクであろうとクルマであろうと、改造するにおいてそんなことが起こるのは昔から分かり切ったことだし、そのネガを差し引いても改造して得られる「悦楽」を疑うことなく求めていたはずである。

それが今回はどうしたことか、ノーマルサイズのタイヤホイールセットの良さをしみじみと感じてしまったのである。結局、自分の感覚が「歳をとった」のかなということを疑った。

だが、現役で最高峰の二輪オフロードレーサーに乗っているという、自分に対する自負もある。

自尊心と不安の間で揺れ動きながら丸一日そのSUV車を乗り回し、深夜の首都高速で帰路を運転しているときに、ある違和感を覚えることがあった。

それは高扁平化されたノーマルサイズのタイヤのよれである。 街乗りでは車体にマッチしていて気持ちよく走っていたはずなのに、首都高速のとある場所でのコーナリングと車線変更時において、とても嫌な感触のよれを感じたのである。

私は自分の感覚が退化する方向に振れたのではなく、反対に、味にうるさくなっているということを理解した。昔なら飛ばしているだけで楽しいし、そのときの乗り味が美味しければあとはどうでも良いというようなものであったのだろう。

しかし今は、それだけで満足することは出来ないのである。同時に、その変化を「歳をとったせい」と言われたら、それはに潔く甘んじようとも思った。だがそういう感覚に変わってきたからこそ、新たに理解できる部分があるというもひとつの発見であった。

同じように、実は最近二輪においても、「うるさい排気音」が大嫌いになってきた。排気音によって高められる感情を楽しんだりした時代もあったが、最近は二輪は出来るならば無音でも良いと思ってしまうくらいである。だが無音で大人しく走りたいという訳ではない。無音で激しく走りたいということなのだ。

この変化は何なのであろう。やはり「歳をとった」ということなのだろうか。だがこの年齢まで闇雲に走り続けてきた経験と意味を、それだけで片付けてしまうのはあまりに単純思考である。

「無駄をなくす」

二輪に関して言うと、現役で自由に乗れる時間というのは限られている。どんな達人であっても、四輪より随分と早い時期に絶対に超えられない限界がやってくる。私自身も有名なバイク乗りが御歳75歳のときに、「立ちゴケ」で骨折をして、その悔しさから自らバイクを絶った瞬間に立ち会っている。

これはいずれ私にもやってくる未来であろう。今、これだけ自由に乗り回しているバイクが、自分の思うように動かなくなってくるのは10年以内かもしれない。

今回、ちょっとしたパンク騒ぎから始まった、加齢とともに変わり続ける感覚というもの。

変わり続けることに戸惑うのか、それとも、その変化を進化へと転じていくか、そこに大きな分かれ目があると改めて思った。

これは芸能という自分の仕事においても同じことだと思う。失われていく見た目の若さを「喪失」と受け止めるのか、次の時代への「進化」と受け止めるのかで、その人から発せられる雰囲気は大きく変わるであろう。

肉体的な若さを維持するのも大事だが、いずれ逆立ちしても失われる毛髪や腹筋、それらを失った先にある、己の生き様というのを今から描いておくのも大事かも知れない。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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