ひこうき雲を追いかけて vol.60 街のバイク屋さん

アヘッド XR230

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ちょっとしたきっかけがあって、中古のバイクを購入した。軽くて小さくて身の丈にあったバイクがいい、といろいろ考えてホンダのXR230にいきついた。ずっと前に販売は終了しているから、入手できるのは中古車に限られる。中古車情報サイトで情報を集め(こうやって探している時が実は一番楽しかったりする)、編集部からほど近い2件のお店に絞った。

text:ahead編集長・若林葉子 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.175 2017年6月号]
Chapter
vol.60 街のバイク屋さん

vol.60 街のバイク屋さん

むりやり同僚を連れ出してさっそく見に行く。1件目は新車も販売している大手のディーラーで、お店のかまえも店員さんもごく常識的。バイクの走行距離もわずか1,000kmで室内保管していたらしく状態も悪くない。が、細かいところに少し気になることもあり、さらに乗り出し価格を聞いてびっくり。

新車のトリッカーが買えちゃうじゃん…! で、2件目に向かった。スマホのカーナビに導かれて行ってみると、「え、これってバイク屋さんなの?」とおもわず口にした。ここは解体屋さんかと思ったのは、店先でメカさんがスクーターを分解整備していたから。私ひとりだったら、くるっとUターンして帰っていたかもしれない。

ところが、なのである。帰ろうとする私を「せっかく来たんだから、まぁちょっと待て」と同僚が引き止めて用件を伝えると、タオル鉢巻きしたメカさんは、分解したスクーターの部品をそれを広げているシートごとざざっと隅に寄せると、作業中にもかかわらず、よっこらしょと店の奥からXR230を出してきてくれた。こちらは走行距離3,800km。

ただ、実物を前にしても、中古でバイクを買う時にどこをどう見るべきなのか私には皆目わからない。だから、そこからは同僚とメカさんのやりとりを聞いているだけ。それでも質問に対する的確な答えとごまかしのない誠実さは十分に感じ取れた。よくよく考え、そのお店のXR230を買うことに決めた。

数週間後、「納車のための整備が終わりました」と連絡を受け、「乗って帰るのが不安なので届けてもらえませんか」と言ったら、それも快く引き受けてくれて、XR230は軽トラに積まれてやってきたのだった。

驚いたのはその納車整備の丁寧なこと。エンジンオイルやブレーキフルードの交換はもちろん、キャブレターもばらして整備してくれていたし、のちにタイヤを新品に交換しようとホイールを外したりして分かったことだが、ボルトやナットを締める際に数種類のグリースを塗り分けてくれているようだった。

お客さんが気づいてくれるかどうかも分からないのに、今どきこんなに丁寧で誠実な仕事をするバイク屋さんがいるんだ、と編集部に出入りするライターやカメラマンたちとひとしきりこの話で盛り上がる。

おかげでこのXR230はエンジンの調子もすこぶる良く、このバイクに試乗したあるライターさん曰く「ホンダのバイクらしく気持ち良く」ギアが入る。低速でねばるからエンストの心配もない。と、みんなに褒められてすっかり気を良くした私は、PCを入れたリュックをってこのXR230で通勤している。

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text:若林葉子/Yoko Wakabayashi
1971年大阪生まれ。Car&Motorcycle誌編集長。
OL、フリーランスライター・エディターを経て、2005年よりahead編集部に在籍。2017年1月より現職。2009年からモンゴルラリーに参戦、ナビとして4度、ドライバーとして2度出場し全て完走。2015年のダカールラリーではHINO TEAM SUGAWARA1号車のナビゲーターも務めた。
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