二輪のSUVムーブメント 〜SUZUKI Vストローム650ABS

アヘッド 二輪

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二輪にはアドベンチャー、もしくはアドベンチャーツアラーと呼ばれるジャンルがある。高速道路だけでなく、ワインディングを含む長距離をできるだけ快適に走破するために作られたバイクのことだ。

text:神尾 成 photo:長谷川徹 [aheadアーカイブス vol.176 2017年7月号]
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二輪のSUVムーブメント 〜SUZUKI Vストローム650ABS

二輪のSUVムーブメント 〜SUZUKI Vストローム650ABS

特徴としては、防風効果の高いスクリーンが標準装備され、ストロークの長いサスペンションやタンデムを重視したシートを持ち、大きなパニアケースを装着することが前提のデザインになっている。代表的な車種で言えば、BMWのGSシリーズやホンダのアフリカツイン、ヤマハのスーパーテネレなどがこれにあたる。

強引な分け方をすると、アドベンチャーバイクは四輪のSUVに近い存在といえるだろう。SUVがスポーツカーと同等の存在感を放ってきたのと同じように、このところ二輪ではアドベンチャーモデルが世界的に人気を集めている。
今回モデルチェンジしたスズキのVストローム650ABSは、中間排気量のアドベンチャーバイクだ。エンジンは現行のSV650ABSと同様に、前モデルから60ヵ所に及ぶ変更を施している。車体も旧モデルより刷新、ハンドリングの向上を図っているという。

しかしそれよりも注目したいのは、スズキのフラッグシップであるGSX-Rやハヤブサと同じ縦目二灯のヘッドライトを採用したことと、80年代後半から90年代の初頭にラリーを席巻した〝砂漠の怪鳥〟と呼ばれるDR-BIGをトリビュートしたクチバシ顔の完成度が増したことだ。

今やアドベンチャーモデルでは当たり前のクチバシ顔は、スズキのDR-BIGが紛れもなく元祖であり、縦目二灯ライトはスズキのアイデンティでもあるのだ。
四輪以上に趣味性の高い二輪にこそ、このような他との差別化やアイデンティの主張が必要ではないだろうか。バイクのジャンルに関わらず、その背景を知ることで購入後の愛着の度合いは違ってくるはず。何を選んだとしても今時のバイクはどれも高性能で機械として大きなハズレはない。

それよりもグローバルな商品作りが主流になってきた現代は、ブランドの個性が希薄になり、クルマやバイクへの愛情を抱き難くくなっていることの方が問題だ。四輪の世界ではグリルのデザインを統一するなどして、オリジナリティを確立しようとしているが、二輪は一部を除いてブランドのアイデンティを構築しているとは言い難い。

これまでの流れを見ると、社会に敏感な四輪の動きを追従するように二輪も変化してきている。スポーツカーが持て囃されれば、レーサーレプリカが流行り、四輪の販売の主軸がミニバンに移行すれば、ビッグスクーターが増えてきた。

SUVの世界的なブレイクから見ても今後はアドベンチャーモデルが二輪のメインストリームになっていく可能性は高い。今回のVストローム650ABSのように、時代に沿った四輪的なモデルチェンジが続いていくことを個人的にも期待している。
アルプスの濡れた石畳や“急勾配でUターンするようなカーブ”を意識して開発したというだけあって低速でのアクセレーションは絶妙。さらに今回のモデルチェンジでトラクションコントロールを追加。

フロント19、リア17インチの懐かしい乗り味に極端な体重移動は不要、全てリーンウイズで賄える。リッターモデルと比べてVストローム650はピッチングが少なく市街地で疲れ難い。軽快感を鑑みてもあえて650モデルを選ぶ価値はある。


■V Strom 650 ABS
車両本体価格:¥907,200(税込)/¥950,400(XT、税込)
エンジン:水冷4サイクル 90°Vツイン DOHC 4バルブ
排気量:645cc 最高出力:51kW(69ps)/8,800rpm
最大トルク:61Nm(6.2kgm)/6,500rpm

1991 DR-Z

まとめてDR-BIGと称されることが多いが、正式名称はラリー専用マシンがDR-Z(ジータ)、市販車は前期型がDR750S、後期型はDR800S。
DR-BIGは、その姿から、「ペリカン」、「オフロード版カタナ」とも言われた。
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