歴史に残るエンジン革命 〜マツダ SKYACTIV-X

歴史に残るエンジン革命 〜マツダ SKYACTIV-X

アヘッド マツダ SKYACTIV-X

※1967年、マツダは1台のスポーツカーを発表した。搭載されていたのは、他メーカーが諦めていた世界初の実用・量産型ロータリーエンジン。小型・高出力のロータリーエンジンの市販化は世界を驚かせ、革命的なできごととして自動車史に刻まれることとなった。不可能と言われたことを可能にするマツダの努力と情熱は、SKYACTIV-Xにも受け継がれている。


4サイクルガソリンエンジンの熱効率を高める手段は究極的には2つしかなく、圧縮比を高めることと、比熱比を高めることだ。比熱比を高めるとは空燃比を高めることを指す。空燃比は燃料と空気の比率のことだ。

空気中の酸素とガソリンが過不足なく燃焼する燃料と空気の比率は14・7で、これを理論空燃比と呼ぶ。理論空燃比よりも空気の割合が多い状態をリーン(薄い)という。理論的には混合気をリーンにするほど熱効率は高くなるのだが、ここで壁が立ちはだかる。プラグで点火を試みても着火しなくなってしまうのだ。

この問題を解決するのがHCCIで、火花点火に頼らず、高圧縮による温度上昇を利用して自己着火させる。高圧縮によって自己着火させるのはディーゼルエンジンと同じで、プラグを用いた火花点火に対して圧縮着火とも呼ばれる。

ただし、ディーゼルが圧縮して高温になった空気中に燃料を噴射することで自己着火させるのに対し、HCCIは燃料と空気をあらかじめよく混ぜておき(その状態が予混合)、高圧縮によって温度を上昇させて着火させる。すると、同時多点的に燃焼が始まるため短期間で燃え終わり、効率良くエネルギーを取り出すことができる。

HCCIは20年以上前から、各国の研究機関や自動車メーカーが研究を続けてきたが、実用化には至らなかった。実用化を阻んでいたのは運転領域が狭い(回転数や負荷の高い領域が苦手)ことだったが、SKYACTIV-Xは圧縮着火と火花点火を運転領域に応じて切り換えるようにしたこと。

さらに、プラグでつくる膨張火炎球を利用して自己着火を狙いどおりに制御する技術を確立し、圧縮着火による燃焼を広い範囲で実現した。火花点火を用いて圧縮着火を制御することからマツダはこの技術を、火花点火制御圧縮着火(SPCCI)と呼んで純粋なHCCIと区別している。

今後、電気自動車が増えていくのは間違いない。ただし、数十年経ってもエンジンを積んだクルマが販売の大多数を占めることは間違いなく、CO2削減の観点から、エンジンの熱効率を向上させる技術開発はますます重要になる。SKYACTIV-Xは、エンジンの重要性を再認識させるマツダからのメッセージだ。

-------------------------------------
text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/

アヘッド ロゴ

関連キーワード

この記事をシェアする

最新記事

アヘッド Car & Motorcycle Magagine ahead archives