大の大人のバイク選び

大の大人のバイク選び

アヘッド バイク選び

昔は大型免許を持っていなければバイクの選択肢は少なかった。大きいがエラい、速いがエラい、という時代はもう過去のものなのである。もっとフラットにバイク全体を見渡すチャンスが来たとも言えるだろう。排気量の大小、新車中古、そのどこにも大人の目に適う魅力的なバイクは存在している。

最近、発売されたばかりのBMW・G310Rとスズキ・Vストロームも気になるモデルだ。大の大人のバイク選びとはーこの2台をヒントに考えてみた。

多様化するバイクの価値観

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平成28年の新規運転免許交付件数を見ると、普通免許の115万に対して、原付を含む二輪免許交付件数は14万件と、ほぼ10分の1しかない。クルマは生活必需品だがバイクは趣味のものだし、雨が降れば体が濡れ、夏は暑く冬は寒い。事故となれば怪我や死亡する危険性がクルマよりも圧倒的に高いことが主因だろう。

言い方を変えるとそれは「バイクの運転はクルマよりもむずかしい」ということだ。クルマは誰でも運転できるが、バイクは違う。やや乱暴な比喩でいえば、バイクを走らせるには、鉄棒の逆上がり程度の身体能力を必要とする。練習すれば多くの人が乗れるようになるが、乗ることを諦める人もそれなりに多い。

それが階層構造を生む。バイクは誰もが乗れるものではない。だからこそバイクを速く走らせられる者が偉い。上手に操れるほうが賢い。バイクに乗るからには速く走れるよう、上手に乗れるよう努力して然るべきだ。

車格が大きく重量のある大排気量車を操れるほうが偉いし、努力して運転技術を会得した者こそバイクを語り、乗る資格がある。それができないならバイクを語るな、乗るな。そのように優劣をつけ、差別する傾向を強める。

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控えめにいってもこれは悪しき習慣だ。

だが、近頃はそれが薄まりつつある。150~400㏄の小排気量クラスの充実はその要因のひとつだ。「大の大人のバイク選び」をテーマに編集部が選んだスズキ・Vストローム250とBMW・G310Rは、なかでも象徴的モデルといえる。

まず、Vストローム250だ。本誌・若林編集長によると、このバイクは「カワイイ」のだという。また、聞いたところでは、スズキが主催した試乗会でも女性客から「カワイイ」と評価され、試乗希望が集まったという。

ディテールをいえば異なるものの、バイクならベスパやモンキー、クルマならDS3、フィアット500にも通ずるかわいさだという。これらに共通するのは、乗りやすさではなく〝親しみやすさ〟だ。

バイク業界には「初心者や女性向けというイメージがついたモデルは売れない」というジンクスめいた常識がある。つまり、悪しき習慣の下層に位置してしまうからだ。おそらくスズキも「カワイイバイク」としてVストローム250を作ったわけではないだろう。

上位モデルとなる1000と650の末弟という位置づけはたしかにかわいさに通ずるが、あくまでそれらのエクステリアイメージを踏襲したアドベンチャーツアラーとして作ったもので、女性に「カワイイ」と評価されるのは想定外のはずだ。

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いっぽうでG310Rはどうか。BMWといえば自他共に認めるプレミアムブランドだ。そのBMWが59万9000円という破格の小排気量車を発売したことは、大きな転換点といえる。

KTM・390DUKEやドゥカティ・スクランブラーSIXTY2より安く、日本メーカーの同クラスより若干高額なだけで、十分に比較対象となり得るバーゲンプライスだからだ。「外車は高い」という常識を、プレミアムブランドと名乗るメーカーが自ら破壊したのだ。

これは既存のバイクユーザーよりも、バイクに興味がない人に対してより威力を発揮する。なぜならBMWの名前とブランド価値は誰もが知っているからだ。購入に際して家族を説得するにも、購入後のステータスとしても理解されやすい。

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さらにいえば、インドで生産されるBMWなど所詮別物だという見方も、やはり悪しき習慣である。後方排気・後傾エンジンで前後輪荷重を適正化し、低価格な小排気量車ながらもBMWらしいバランスに優れる動力性能を、安かろう悪かろうと侮るのは軽率だろう。

とはいえ、この2台が象徴する価値観の転換は、日本のマーケットを意図したものではない。各メーカーが販売している小排気量モデルは、ASEAN諸国等で生産・販売することで利益を生むよう企画開発されたモデルだ。

グローバルな販売戦略において日本市場はその数%にすぎない。いずれの小排気量車も余剰が日本に輸入されているに等しいにもかかわらず、日本のバイク文化に根づいている悪しき習慣を改善させる力を持っている。

アヘッド バイク選び

これまで、バイクという乗り物は走らせるだけで価値があった。バイクに乗ることが目的だったといっても過言ではない。しかし昨今の日本では、バイクはコミュニケーションツールに変わりつつある。

バイクに乗ることは手段にすぎず、友人を作ったり仲間との絆を深めたり、あるいは家族に人生の楽しさを伝えるための媒体になっている。この傾向は若年層に顕著だが、中高年も例外ではない。

コミュニケーションの幅を広げるため、そして悪しき習慣をなくして誰もがバイクを気軽に楽しめるよう、バイクの価値観はさらに多様化していくし、新たな付加価値も求められる。それが次世代へとバイクの愉悦を伝える架け橋となる。

こうしたバイクに注目して架け橋を増やすことが、酸いも甘いも噛み分けた大人の選択なのではないだろうか。

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