アルファ ロメオの復活劇 ALFA ROMEO GIULIA QUADRIFOGLIO

栄光の後輪駆動

アヘッド アルファロメオ 新型ジュリア

その狙いはもちろん、後輪駆動だったころのアルファの栄光を取り戻すことにある。新型ジュリアをブランド再構築のとして、アルファ・ロメオは北米への本格復帰、中国市場への本格進出に挑もうというのだ。

歴史を紐とけば、ミラノのモータリストたちがAnonima Lombarda Fabbrica Automobili (ロンバルダ自動車製造有限会社)を設立したのが1910年。Alfaは早速レース活動を開始し、その名前を高めようとするも、経営は火の車で、それを救ったのがニコラ・ロメオというナポリ出身のビジネスマンだった。彼が買収したことでアルファはアルファ・ロメオに生まれ変わる。

戦前のアルファ・ロメオは、いまのフェラーリのような存在だった。実際、エンツォ・フェラーリが果たした役割はとてつもなく大きい。1923年にフィアットから名設計者のヴィットリオ・ヤーノを引き抜き、スクーデリア・フェラーリなるレーシング・チームを組織、ヤーノのアルファ・ロメオのグランプリ・カーを走らせ、あまたの勝利を獲得、イタリア人民に熱狂と陶酔をもたらした。

エンツォは戦後、自分の名を冠した自動車メーカーを起こすにあたって、かつてのアルファを母とし参考にしたのはこの成功体験あってのことなのだ。

一方のアルファ・ロメオは一民間自動車会社として再出発、1950年、初の完全戦後モデルとなる中型サルーン、1900を発表する。フェンダーやヘッドライトを外せば、そのままレースに出られ、勝利さえ手にしてしまうスーパー・スポーツを少量生産していたアルファは、ここにいたってフツウの量産メーカーへと脱皮する。

1900とジュリエッタ

アヘッド アルファロメオ

1900と、'54年にデビューするジュリエッタ・スプリント、さらにその半年後に登場するジュリエッタの4ドア・サルーンは、現代の目で見るときわめてよく似ているように筆者には思われる。アルファ・ロメオの戦後2度目の再出発を担う今回の新型ジュリアを構想するにあたって、デザイン担当者はこの1900、ジュリエッタに注目したのではあるまいか。

ジュリエッタとはもちろん、シェイクスピアの悲劇「ロミオとジュリエット」から命名された。アルファ・ロメオの若いジュリアちゃん、というロマンチックな名前である。「名前になんの意味があるの? バラを別の名前で呼んでも甘く香るのは同じ」とジュリエットは窓辺でつぶやくわけだけれど、今回の新型ジュリアと同じ名前の初代ジュリアが現れたのは1962年。半世紀以上も前のことだ。

先般、真夏の真っ昼間に表参道をグリーンのジュリアのサルーンが颯爽と駆け抜けるのを見かけて、筆者はオッと思った。窓を開けてドライブしていたのが黒髪の女性だったからなおさら……、ということはさておき、通常「ジュリア」といわれて私たちが思い浮かべるのは、サルーンではなくて、巨匠ジウジアーロがベルトーネ時代に手がけた2ドア・クーペだろうと思う。

マエストロの傑作にして、1960年代半ば、欧州ツーリング・カー選手権を舞台に、コーティナ・ロータスやらBMW1800やらミニ・クーパーやら、別のクラスだけれど、ポルシェ911やらジャガー・マーク2やらを相手に大活躍、複数の年で年間チャンピオンを獲得した戦後アルファの金字塔である。

今度のジュリアのスタイルにもし違和感を抱く人がいるとすれば、ジュリアという名前が与えられたことによって、それまでの156、159の系譜が切断され、いきなり60年代のジュリアを連想してしまうからであろう、と筆者は推察する。

新型ジュリア、とりわけクアドリフォリオはBMW M3とメルセデスAMG C63をターゲットにしているわけだけれど、そのあたりの事情を無視しても、50年後のジュリアが50年前のジュリアと似ても似つかぬように見えるのは当然だろう。

同じ名前でつくられ続けているミニや911のいまのカタチが受け入れられるのは、なぜいまのカタチになったのか、その経過を私たちが知っているからだと私は思う。50年前の彼女たちはいまよりはるかにちっちゃくてラブリーだったのに。

超絶セクシー

アヘッド アルファロメオ 新型ジュリア

クルマはカッコウがすべて、と傲然といいはなつ慣例句があるけれど、筆者はこれに与しない。あれはビジネス上の成否のことであって、カッコ悪いと思ったクルマでも、ドライブしてみたら、なんてステキ!と思い直すこともある。

たとえば、23年前のアルファ75はじつにヘンテコリンなカタチだったけれど、トランスアクスルでインボード・ブレーキ、ドディオン・アクスルという、アルフェッタゆずりの凝ったメカニズムをもっていた。乗ると鼻先が軽くて、エンジンがハミングしながら走った!

デザインというのはまことに不思議なもので、昨日まで古臭いと思っていたデザインが、もっと古くなると俄然モダンに見え始めたりする。75もまたしかり。デザインはデザインだけで成り立っているものではない。

というわけで、新型ジュリアにはぜひ乗ってみたい。筆者もまた、そう切望する者のひとりである。なんせフェラーリ458のエンジニアが手がけたサルーンなのだ!

新型ジュリアが町を走り始めたら超絶セクシーに見えるだろう。

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text:今尾直樹/Naoki Imao
1960年生まれ。雑誌『NAVI』『ENGINE』を経て、現在はフリーランスのエディター、自動車ジャーナリストとして活動。現在の愛車は60万円で購入した2002年式ルーテシアR.S.。

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