埋もれちゃいけない名車たち VOL.13 コスモに見る大人のゆとり「MAZDA COSMO AP/COSMO L」

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トヨタは86のみ。日産はフェアレディZとスカイライン、そしてGT-R。ホンダはCR-Z。スバルはBRZで、マツダのロードスターも数に入れることにしよう。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.129 2013年8月号]
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VOL.13 コスモに見る大人のゆとり「MAZDA COSMO AP/COSMO L」

VOL.13 コスモに見る大人のゆとり「MAZDA COSMO AP/COSMO L」

日本の自動車メーカーが作る2ドア・クーペ、2ドア・ハードトップは、もはやそのぐらいしか残っていない。寂しい時代になったなぁ…と思う。
 
昔は大きく違っていた。クラウンにすら2ドア・ハードトップがあったし、カローラのような小型大衆車どころか軽自動車にさえ2ドア・クーペがあった。各メーカーがクラスごとにクーペを用意し、同じクラスに複数の雰囲気違いの2ドア・モデルを並べていたくらいの様相だった。
 
2ドア・ハードトップや2ドア・クーペは、いわば贅沢車。多くはカリカリのスポーツカーでも生活のための実用車でもなく、スタイルや雰囲気を重視した〝伊達〟車である。フトコロよりもライフスタイル=日々を暮らす気持ちにゆとりがないと、手を出しにくい類のクルマである。そして同時にそれは、カッコイイ大人になりたい若者達の憧れの気持ちを強く掻き立てた存在でもあった。それらが受け入れられていた時代──。
 
その頃を象徴する1台が、マツダ・コスモAPである。先代はコスモ・スポーツという名前で、世界初の量産ロータリー・エンジンを搭載した、リアルスポーツカーだった。が、その名を受け継ぐ2代目は、あらゆる部分にどこかアメリカンな香りを漂わせた、内外装も装備類もややゴージャスなスペシャルティクーペだった。

途中からルーフの処理をノッチバック+ハーフレザートップにして小さなオペラウインドー(リアクォーターウインドーのこと)を設けたコスモ〝L〟が追加され、ますます優雅で粋なオトナのためのクルマという印象を強めていった。
 
この時期はスポーツカーやスポーティカーにとっての受難の時代。排ガス規制の影響で悪者じみた扱いがなされ、徐々に骨抜きにもされ、次々に葬り去られようとしていたのだ。
 
そこに投入された2代目コスモは、AP(公害対策の意味)の名を纏いながらも、その実は135psという当時としてはパワフルなロータリー・エンジンを搭載した、かなり速いクルマでもあった。それを〝大人のゆとり〟な雰囲気でやんわり隠し、生き抜く道を探し当てたのだ。
 
このコスモが発売と同時に高い人気を得たのに勇気づけられ、他の自動車メーカーが奮起してスポーツモデルの開発に再び情熱を燃やし始めたのは、あまり知られていない話だ。
 
その隠れた歴史的功労車である側面を横に置いても、2代目コスモ、何とも雰囲気のある伊達車である。こうした理屈抜きに魅力的なクーペがたくさん生まれ、それをユーザーが喜んで受け入れられるような、心にゆとりのある時代が早く再来しないものか…と、クルマ好きとして強く強く思う。

MAZDA COSMO AP/COSMO L

第1次オイルショックの直後、1975年に登場したマツダ・コスモAPは、美しいリアルスポーツカーだったコスモ・スポーツの名を受け継いだ高級スペシャルティカーである。

APとはアンチ・ポリューション、つまり公害対策を意味するもので、高性能なロータリー・エンジンを搭載しながら燃費を向上させ、他社に先駆けて昭和51年排ガス規制をクリアしたことによるネーミングだ。高級クーペを装いながら動力性能も見事で、195km/hの最高速度と15.9秒の0-400mタイムは、あの悪夢の時代のクルマとしては驚くべきものだった。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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