埋もれちゃいけない名車たち vol.63 常用ヨンクの世界的先駆者「スバル・レオーネ」

アヘッド スバル レオーネ

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その昔、ヨンク(=四輪駆動=4WD)というのは圧倒的にワイルドな乗り物だった。それは野山を移動するためのモノであり、道なき道に分け入るためのモノであり、平凡とはいえない自然環境の中で暮らすためのモノであり、そうしたシーンの中で働くためのモノであった。ヨンクの持つタフさそのものに、僕達は惹かれたのだ。実用的で強力な道具であるがゆえのカッコよさ、である。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.179 2017年10月号]
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vol.63 常用ヨンクの世界的先駆者 スバル・レオーネ

vol.63 常用ヨンクの世界的先駆者 スバル・レオーネ

今やデザインコンシャスだったりゴージャスだったりする都市型マルチパーパスSUVにはもちろん、様々なクルマに当たり前のように4WDシステムが投入されている時代。多くのユーザーは〝もしものときの安心感〟あるいは〝洒落者ライフスタイル証明書〟としてのパフォーマンスを、迷いなく引き出している。

現代のヨンクのクルマは〝その昔〟の頃と較べると、路面や大地を握りしめて駆動する性能が格段に向上している。そしてソフィスティケートされた乗り味や扱いやすさを持っている。それはもはや世界的にも当たり前の事実になっているといえる。

その起点となったクルマは何かといえば、スバル・レオーネだろう。ジープのようなクロスカントリー系ではなく、乗用車の車体に4WDシステムを組み込んだ世界初の市販車だからだ。4WDシステムは、レオーネの登場から単に悪路を走破するためだけのものではなくなった。

レオーネ4WDのデビューは1972年。3年後にセダンにも4WDモデルが追加されるが、当初は〝エステートバン〟と呼ばれるライトバンのみの設定。その前年に東北電力からの積雪地における走破性と乗用車としての快適性を備えたクルマが欲しいという依頼に応え、レオーネ・バンの4WD車を数台のみ製造したことがきっかけになった。

レオーネ4WDに採用されたのは、センターデフを持たないパートタイム式。状況に応じてFWDと4WDを切り替える仕組みだったが、その威力は絶大で、当初は業務用に重宝されていたが、少しずつ一般ユーザーにも浸透し、日々の暮らしの中でも4WDが極めて有用であることを知らしめるカタチになった。

それはアウディが今では代名詞のようになっている〝クワトロ〟を発表する、実に8年前のお話である。

以来、スバルは悪路走破だけではなく雨や雪などの悪天候時や高速走行時の安定性、左右対称で低重心な水平対向エンジンとの組み合わせを巧く利用したスポーツ性の高さなどに主眼を置いて、4WDのテクノロジーを磨き続けてきた。現在の4WDの基本的存在意義は、まさしくそこにある。

初代レオーネは必ずしもヒット作とはいえなかったが、世界の先駆けとなった、自動車業界全体にとってのエポックメイキングな存在だったのだ。その事実を忘れてはいけない。

スバル・レオーネ

スバル・レオーネに4WDモデルがラインアップされたのは、シリーズのデビューから約半年後の1972年4月のこと。

副変速機のレバーでFWDと4WDを切り替えるパートタイム式4WDだったが、次第に降雪が多い地域や山間部などに住む人達、それにスキーなどのアウトドアスポーツを楽しむ人達から強く支持された。

初代レオーネそのものは、ロングノーズのスタイリングが従来のスバルのイメージとは掛け離れていたことや全体的にアクが強かったことなどが影響して販売的な大成功は収められなかったが、4WDはその後もスバルの大きな“売り”になり、現在に至る。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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