埋もれちゃいけない名車たち vol.52 ジウジアーロ作の国産車「日産 初代マーチ」

アヘッド 日産初代マーチ

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自動車エンスーやインダストリアルデザインに関心の高い方は、いわゆるカー・デザイナーと呼ばれる著名人の名前をいくつか挙げることができるaだろう。いわゆるスーパーカーのようなド派手なクルマの造形を担当したデザイナーの名前は記憶に残りやすく、そうした著名デザイナーの作品にいつかは乗りたい、なんて願ったことだってあるだろう。

text : 嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.168 2016年11月号]
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vol.52 ジウジアーロ作の国産車「日産 初代マーチ」

vol.52 ジウジアーロ作の国産車「日産 初代マーチ」

でも、僕達のようなクルマ業界の周りにいる人間なら当たり前のように知ってることだけど、そうしたスーパーカーを手掛けるようなデザイナーも〝フツーのクルマ〟を手掛けてたりすることを御存知ない方が意外と少なくないようだ。

例えばベルトーネ時代にランボのカウンタックやミウラを手掛けたマルチェロ・ガンディーニは、シトロエンBXやルノー5だってやっている。

ピニンファリーナ時代にフェラーリのBBやF40を手掛けたレオナルド・フィオラヴァンティは、プジョー205にも深く関わっている。優れたデザイナーは、何をやらせても優れた造形を創造できるものなのだろう。

が、そうした著名デザイナー陣の中で最もその傾向が強く、最も数多く〝フツーのクルマ〟に関わったのは、間違いなくジョルジェット・ジウジアーロだろう。

初代ロータス・エスプリ、マセラティ・ボーラ、デロリアンDMC12、BMW M1といったクルマ達を手掛けているが、小型車のベンチマークとなった初代VWゴルフやパッケージングのお手本といえる初代フィアット・パンダなどを生み出したことでも知られている。

日本車も手掛けており、彼の名前を知らない人でも作品を見たことぐらいは絶対にあって、〝デザインいいね〟と感じたことがあるはずだ。例えば誰もが知ってるヒット作の中から1台を選ぶとしたら、1980年代の日本のコンパクトカーを代表する初代日産マーチ。あれだってジウジアーロの作品なのだ。

水平のラインを重視することの多いジウジアーロ作品の特徴をしっかりと持った初代マーチのボディは、柔らかいイメージの欧州車っぽい雰囲気を持ったスタイリッシュさもさることながら、コンパクトなサイズに大人4人がちゃんと収まって移動できる室内を持つ、実用的なパッケージングがなされていた。

それも、実はジウジアーロ作品の特徴。ただデザインとパッケージングがいいだけじゃなく、車体が軽くハンドリングもなかなかのレベルだったこともあり、いわゆるリッターカーながら意外やスポーティで、そんなところも支持された。クルマとしての死角がかなり少なかったのだ。

他にもジウジアーロ作の日本車は名車といわれるモノも含めてたくさんある。優れたデザインと一緒に暮らすのはただそれだけで楽しいものだから、ぜひ探してみて欲しい。

日産 初代マーチ

初代マーチは1982年に発売が開始され、10年にもわたって生産され続けた日産の歴史的コンパクトカー。その前年の東京モーターショーに“NX-018”の名前で生産前提のコンセプトカーとして展示され、日産初のリッターカークラスの2ボックスハッチバックとして高い注目を浴びた。

当初から最小限の装備のみを持つシンプルなクルマであったが、運動性能も良好で、ワンメイクレースが行われたほか、ストリートカーとしてのターボ・モデルやターボとスーパーシャージャーを同時に備える競技ベース車両なども、後に追加された。若者達のいいアイテムだったのだ。

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text : 嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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