コクピットのトレンドを調査せよ

アヘッド コックピッド

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発売されたばかりの新型アウディTTにはホントに度肝を抜かれた。コクピットのことである。

text:今井優杏 [aheadアーカイブス vol.155 2015年10月号]
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コクピットのトレンドを調査せよ

コクピットのトレンドを調査せよ

▶︎アウディTTでは、通常ならメーター類が収まるドライバーの正面に、12.3インチの高解像度モニターを搭載。視線を横にずらさなくても、ステアリング越しにカーナビの地図を見ることができる。また、空調類の表示や調整スイッチは、送風口の中心に組み込まれた。


バーチャルコクピットというのがその名前なのだが、メーターパネルが全面液晶になっていて、そこにカーナビが表示されるというもの。コレが猛烈にカッコいい。

さらにエアコンのエアベントにも新しい工夫が。丸い送風口の真ん中にデジタル表示で温度や風量・風向きなんかが表示されるのだが、これにもひっくり返るかと思うくらいハートをズキュンと射抜かれた。

それらがアウディならではのそっけないほどのシンプル・クールな雰囲気とうまく溶け合って、近未来的で無機質なイメージをより一層際立たせているさまは、とにかくお見事だったのだ。

キャラの立った内装を持つクルマというのは、近年ほんとうに少なくなってしまった。
▶︎フィアット新型500では、大型タッチスクリーン式モニターを中心とする最新インターフェースを取り入れた。


もちろん、乙女内装でありながら多くのオジサンをもメロメロにした完全無欠のキャラ立ちカー・フィアット500みたく、一刀入魂の専用内装は素晴らしいに決まっているけど、こういうのはモデルサイクルの長いクルマだからこそ出来るんだろうな、とかオトナの解釈をしてみたりして。切ない。

同じ論法はBMWミニにも当てはまる。工業製品である以上、ひとつのモデルにそれほどのコストをかけられないというのは世知辛くも真実なのだもの。

しかしその辺をうまく逆手に取ったクルマもある。
▶︎ラウン×アイボリー×レッドの組み合わせでコーディネートされたスズキ、アルト・ラパン ショコラ


他モデルとの共用部品を上手に使いながら独自の内装を作ってきたのはスズキのアルト・ラパンで、これもキッチュなムードを世界観づくりに生かしていて、いたくトキメかされてしまった一台だ。

アクセルペダルを踏む前、ドライバーズシートに身体を納めるだけでパアっと気持ちが華やぐクルマに出逢うこと、それってクルマ選びの究極の至福じゃないかと思うのだ。

クルマにはいろんな用途を求めていろんな人が乗るから、多岐にわたる顧客のニーズを最大公約数でまとめたら、トキメキなんていう要素よりも機能的な美しさやシンプルさが重宝されちゃうのは致し方ないことかもしれない。そしてもちろん優れたプロダクトデザインを持つクルマだって素敵なのだけど。

だけど、である。クルマに移動手段以上の「プラスアルファ」を求めがちな私たちクルマ愛好家にとって、乗るたびにこのクルマを選んだ自分の審美眼を褒めてあげたくなる、とっておきのコクピットを持てる幸せったらないと思う。

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text:今井優杏/Yuki Imai
レースクィーン、広告代理店勤務を経て自動車ジャーナリスト。WEB、自動車専門誌に寄稿する傍らモータースポーツMCとしての肩書も持ち、サーキットや各種レース、自動車イベント等で活躍している。バイク乗りでもあり、最近はオートバイ誌にも活動の場を広げている。
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