埋もれちゃいけない名車たち vol.58 ロータスファンの未来をつくろうとした「ロータス・エスプリ」

アヘッド ロータス・エスプリ

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クルマの"未来"を想うとき、今ではリアリティを持って迫ってきてる自動運転というキーワードが、無視することのできない存在になっているのは確かだ。

text:嶋田智之 [aheadアーカイブス vol.174 2017年5月号]
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vol.58 ロータスファンの未来をつくろうとした「ロータス・エスプリ」

vol.58 ロータスファンの未来をつくろうとした「ロータス・エスプリ」

例えばステアリングアシスト付きのアダプティブクルーズコントロールなど、自動運転の要素のひとつである運転支援システムが当たり前のように市販車に実装されている昨今、それらを体験すると、これがさらに進化すれば"移動"そのものがガラッと変わることは間違いないとは思う。

技術的な興味から体験してみたいとも思う。けれどドライビングという行為のファンとして、"そこに夢はあるのか?"という疑問がドバッと膨らんでくるのも圧倒的な事実ではある。

その昔、自動運転という言葉に現実味がなかった時代も、自動車メーカーは様々なカタチでの"未来"を模索していた。"社会の中における自動車"という模索もあったが、多くは"自動車メーカーとしての未来"、つまり"自分達がユーザーにもたらすことのできるクルマとしての可能性"であったように思う。

例えば延々とシンプルなライトウェイトスポーツカーのみを作り続けてきたロータスは、1970年代前半、時代に沿った高級感のあるGTカーを送り出したが、芳しくなかった。ロータスのクルマとしては様々な意味合いにおいて軽やかさに欠け、それまでのファンをも逃す結果となったのだ。

そこで創設者コリン・チャプマンは、"ロータスにとっての未来、ロータス・ファンにとっての未来"を考えたのだろう。ゴージャスではあるが、ロータスとしてのテイストを遵守したスーパースポーツカーの路線を切り開こうとしたのだ。

1975年に発表された、エスプリがそれである。ジョルジェット・ジウジアーロによるスタイリングは、異質感すら漂うほどの徹底したウエッジシェイプ。それは同時代のフェラーリやランボルギーニと較べても、スポーツカーとしての未来を感じさせる雰囲気を持つものだった。

そしてロータスの不文律であるべき抜群のハンドリングと軽やかな走りのテイストは明確に残されていた。チャプマンの狙いどおりだっただろう。途中で大掛かりなマイナーチェンジを受けつつも、28年間も生産され続けた長寿モデルとなったのだ。

1977年の映画『007 わたしを愛したスパイ』では、エスプリは軽やかな走りを見せたばかりかボタン操作で潜水艇に変身して海の中を突き進むボンド・カーとしても活躍した。エスプリのフォルムは、そこでも〝未来〟を連想させてくれた。

あの当時の自動車メーカーの考える"未来"の多くは、男の子にとって、クルマ好きにとって、間違いなく夢と希望に満ちた存在だったのだ。

これから先の自動車の"未来"は、夢を見させてくれるだろうか──?

ロータス・エスプリ

1975年に発表されたエスプリは、ロータスが初めてスーパースポーツカーの分野に投入したモデル。

ジウジアーロ作の極端なウエッジシェイプ・スタイルの車体にミドシップ・レイアウトされたのは、ライバル達よりスペックで見劣りする直列4気筒エンジンだった。

当初はアンダーパワーを指摘されたが、V6やV8と較べて軽量であるという利点があり、そのメリットを活かした極めてロータスらしい抜群のハンドリング性能を発揮し、ロータス・ファンを唸らせた。

また1980年にはターボで武装した高性能版も登場し、ライバル達に遜色のない速さを得たのだった。

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text:嶋田智之/Tomoyuki Shimada
1964年生まれ。エンスー系自動車雑誌『Tipo』の編集長を長年にわたって務め、総編集長として『ROSSO』のフルリニューアルを果たした後、独立。現在は自動車ライター&エディターとして活躍。
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