私の永遠の1台 VOL.29 トヨタ 初代セルシオ

アヘッド トヨタ 初代セルシオ

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自動車大好き、マニュアル大好き人間だったが、それが高じて念願のプロドライバーになり、サーキットで一日中ギアシフトしていると、サーキットの往復ぐらいギアシフトのない楽なクルマで移動したくなってしまった。で「楽で、静か、しかもパワフル」という自堕落わがまま状態に陥り、中古車のクラウンを2代目、3代目、4代目、7代目と乗り継いだ。

text:津々見友彦 [aheadアーカイブス vol.189 2018年8月号]
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VOL.29 トヨタ 初代セルシオ

VOL.29 トヨタ 初代セルシオ

最初は2リッターのクラウンだったが、やはり2リッターではパワーレスで「パワフル」のコンセプトには不足。でその後の2.8リッター、ロイアルサルンはそこそこパワーがあり、それなりに満足していた。

1989年にトヨタが満を持してベンツ、BMWに対抗するインターナショナルレベルの高級車「セルシオ」を発売した。そのシルエットを見た途端、全身に電撃が走った! 「これこそが欲しいクルマだ!」

バランスの良いノーズに4ドアのボディ。トランクもスムーズに伸ばされている。

美しい! 伸びやかな曲線とトランクのテイルエンドの処理がたまらない! わずかにダックテイルが反り上がり、空力効果と共にセダンながらスポーティな雰囲気。4隅のフェンダーは品良く盛り上がりそれらは張りのある側面で構成されている。今までインポートカーにしか見られなかった美しいシルエットが見事表現されている。しかもトヨタ車で…!

乗って、また驚いた。 静かな走り出し。しかもスムーズ。ベンツの高級モデルにしか感じないこの優雅な走りの雰囲気を国産車で得られるとは…。

それでいて、動力性能も肝を抜く。4リッターV8のトルクは力強く、フルスロットルで一発くれてやると滑らかにV8は吠えて、強力な加速性能に大満足。料金所の支払いで一時停止後の短い距離のバトルでは特に軽快だった。

私の理想のクルマのコンセプトである「パワフル」という点でも合格だった。当然ながらミッションは4速AT。センターコンソールは、憧れたベンツ、BMWのように艶のある美しい木目。

乗るたびに静かで滑らかな走りには何時も満足だった。スタイリングもギラギラとした鋭さはないものの、見飽きない。優しくも風格のある佇まいは魅力だった。特にリアスタイルは降りるたびにいつも見とれるほど。ブレーキの効きとヘッドライトの明るさには不満はあったもののそれでも許せた。

私が国産車にこだわったのは「故障の少なさ」である。それとやはりコスパの良さ。

だが、残念ながら昨年の暮れにセルシオを手放した。76歳になった私の運転能力のポカミスを助けてくれる自動ブレーキや渋滞追従のレーダークルーズなどの安全デバイスが必須になったからだ。これをセルシオに求めるのは酷。

だが、25年間もの長きに渡り常に心を満たし続けてくれたセルシオにはただただ感謝しかない。まさに私の心に残る〝永遠の1台〟である。

トヨタ 初代セルシオ

1989年にベンツ、BMWなど高級セダンの一角に喰い込むべくトヨタが威信を懸けた“レクサス”の“LS”。同年10月に日本では“セルシオ”のネーミングで発売された。Cd値0.29のスリークなボディ。欧州車に負けない究極の静粛性やスムーズさを狙い、パワートレイン系のダイナミックバランス取りを徹底した。工場見学でその意欲と手間の懸け方に驚かされたものだ。(津々見友彦)

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text:津々見友彦/Tomohiko Tsutsumi
1941年生まれ。元自動車レーサーであり自動車評論家。'64年に日産ワークスドライバーに選ばれたのを皮切りに、トヨタ、いすゞと3メーカーのワークスドライバーを経験。70年代以降はジャーナリストとして活動しながらも、プライベーターとして長くレースに出場し続けた。
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