EVオヤジの未来予想図 VOL.13 5L V12のジャガーに乗っていた頃

VOL.13 5L V12のジャガーに乗っていた頃

アヘッド EVオヤジの未来予想図

この頃、国産車はビンテージだった。NSX、後のレクサス当時のセルシオ、後のマツダ・ロードスター当時のユーノス・ロードスター、そしてスカイラインGT-Rの復活と、素晴らしい国産車があいついで登場した。そして世間はバルブ景気に沸き返っていた。

私は7thスカイラインからR32スカイラインGTSに乗り換え、さらにユーノス・ロードスターも手に入れ、その後、人気が爆発したパジェロにも乗っていた。

購入したジャガーは、XJSといって2人乗りのスポーツタイプ。本当はカブリオレが欲しかったのだが、諸般の事情でクーペ。その頃、長男が高校に、次男がその高校の中学に入ったこともあって、妻とジャガーXJSに乗って飯能の彼らの学校に行った。

翌週の某週刊誌に「この中高学校には、こんな高級車に乗って来る父兄がいる。外車のスポーツカーだ」との記事が載った。バブル経済のまっただ中だったこともあって、実にタイミングの良い記事であった。おもしろそうだったので読んでみると何のことはない。高級車とは私共のジャガーXJSのことだった。

XJSの燃費はリッター2~3キロ。往復20キロほどの事務所に1週間通うと70リットルの燃料タンクは、ほぼ空になる。なじみのGSに週に1度、ガソリンを入れに行く。店員に「まいどー」と嬉しそうな顔をされる。そして、まんまと1万円札を取り上げられた。その上、車両保険が高かった。たしか年間80万円ほどだったと思う。

こんなことになったのは、みんなあの徳さんのせいである。当時は、雑誌NAVIが絶好調だった。中でも徳さんこと徳大寺有恒さんと、編集長の大川 悠さんと私の無茶ブリNAVIトークが人気だった。

新しいNAVIが発売になると、途端に編集部の電話は鳴りっぱなしになったという。NAVIトークで悪口を言われたメーカーの広報部からの抗議の電話だったというが、本当のところは知らない。

あるとき、カンガルーバンパーという大きなフロントバンパーが流行ったときに、私が口を滑らせて「これからは全車にカンガルーバンパーが付くのだ。フルライン・カンガルーバンパーだ」と口を滑らせたら、そのまま掲載され、某メーカーが怒り心頭に発し、編集部員一同丸坊主になって事を収めたと聞くが、本当の話かもしれない。

そういえば、ターボ・チャージャーが流行ったときには、「ダメエンジン。ターボを付けてもダメエンジン」と口を滑らせてしまった。これも編集部は後始末が大変だったというが、ほんとうのところは知らない。

しかし、徳さんはもっと凄かった。私は口を滑らせるのだが、徳さんは本気で怒っていた。とくに国産車には厳しかった。「こんなことをしていては、やがて途上国に市場を奪われる」と。現在、その言葉通りに事態は進んでいる。近いうちに国産メーカーは日本国内では軽自動車しか売れなくなるよ。きっと。

そんな本気で自動車を愛した徳さんに薦められたのが、ジャガーだった。ジャガーを語る時の徳さんは、満面笑みを浮かべた。「話すと(魅力が)減るんじゃないかな」と、とても嬉しそうに、そして愛しそうにジャガーを語った。

だが、その先にジャガーには哀しい話が待っていた。次回は波乱万丈だぞ。

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text:舘内 端/Tadashi Tateuchi
自動車評論家。日本EVクラブ代表。1947年群馬県生まれ。日本大学理工学部卒業。東大宇宙航空研究所勤務の後、レーシングカーの設計に携わる。日本における電気自動車の第一人者である。1994年 日本EVクラブ設立。『トヨタの危機!』(宝島社)など著書多数。

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