気筒休止ブーム再来

アヘッド 気筒休止ブーム到来

※この記事には広告が含まれます

気筒休止システムが息を吹き返してきた。最新事例はマツダCX-5が搭載する2.5ℓ直4自然吸気ガソリンエンジンだ。高速道路を一定速で走るような、大きな出力を必要としないシーンでは、1番気筒と4番気筒を休止し、残りの2気筒のみを使って走る。疑似的に1.25ℓ2気筒エンジンとして走るわけだ。その方が、燃費が良くなるからである。マツダによると、80㎞/h一定速で気筒休止した場合は9%の燃費改善が確認できたという。

text:世良耕太 [aheadアーカイブス vol.189 2018年8月号]
Chapter
気筒休止ブーム再来

気筒休止ブーム再来

なぜ排気量を半分にして走ると燃費は良くなるのだろうか。大きな排気量でゆったり走った方が燃費は良くなりそうだが──。

燃費向上のヒミツはポンプ損失にある。ガソリンエンジンは一般的に、円筒形の吸気通路をマンホールのフタのような円板でふさいでいる。この円板がスロットルバルブだ。ふさがっている状態がスロットル全閉。円板の中央には軸が串のように刺さっており、アクセルペダルの踏み込み量に応じて軸が回転し、シリンダーに入る空気の通り道が広くなる。

急勾配の上り坂で発進するような、大きな力が必要な状況ではアクセルペダルを深く踏み込むので、スロットルバルブの開きは大きくなり、大量の空気がシリンダーに向かう。だが、市街地を低速で走っていたり、高速道路を一定速でクルージングしたりしているときは、アクセルペダルをほんの少ししか踏み込まない。大きな力は必要ないので燃焼に必要な空気も少なくてよく、スロットルバルブは少ししか開かない。

でも、ピストンはそんな事情とは関係なく、たくさん空気を吸い込もうとして下降するので、狭い口が邪魔になって損失が出る。注射針の先から空気を吸おうとするとき大きな力が必要になるのと一緒だ。

注射針をストローに替えて空気をシリンダーに取り込む仕事を楽にしてやろうというのが、気筒休止の基本原理だ。4気筒で分担していた分を2気筒にすれば、シリンダーに取り込む空気量は2倍になり、そのぶんスロットルの開き量は大きくなって抵抗(=損失)は減るからだ。

気筒休止は90年代に実用化され、8気筒を4気筒に制御したり、6気筒を4気筒や3気筒に制御するシステムが考案されたりしたが、多気筒エンジン搭載車を購入する層はあまり燃費に敏感ではなかったのか、注目を集めたとは言いがたかった。最近になってブームの兆しが出てきたのは、ユーザーの燃費に対する意識の高まりを反映しているのだろう。

ちなみに、先のル・マン24時間で優勝したトヨタのマシンも、低速走行中は2.4ℓV6ターボエンジンの片バンク3気筒を停止し、高効率・低燃費運転を行っている。

▶︎気筒休止が採用されている車種:ランボルギーニ ウラカン/アストン・マーティン DB11/ベントレー コンチネンタルGT/VW Golf/Mazda CX-5

-----------------------------------
text:世良耕太/Kota Sera
F1ジャーナリスト/ライター&エディター。出版社勤務後、独立。F1やWEC(世界耐久選手権)を中心としたモータースポーツ、および量産車の技術面を中心に取材・編集・執筆活動を行う。近編著に『F1機械工学大全』『モータースポーツのテクノロジー2016-2017』(ともに三栄書房)、『図解自動車エンジンの技術』(ナツメ社)など。http://serakota.blog.so-net.ne.jp/
【お得情報あり】CarMe & CARPRIMEのLINEに登録する

商品詳細