Rolling 40's VOL.112 運転代行の初夢

VOL.112 運転代行の初夢

アヘッド ROLLING 40's

人間では何十年もかかるような未知の新技術を、人工知能は数時間で開発してしまったりするという。

これは簡単な理屈で、有史以来、科学の根幹を変えるような、ニュートンやアインシュタインレベルの天才というのは地球上には数百人しかいない。もしかするともっと少ないかもしれない。人類総がかりで、たったそれだけなのである。それが生物としての限界なのだろう。

故に「焚き火」から「核融合」に辿り着くまでには、ここ二百年で急激に進歩したものの、ジワジワと数十万年という長い時間が掛かってしまったわけだ。

しかし人工知能はニュートンやアインシュタイン以上の知能を人工的に無限数作り出し、その総力で一気に考えるので生物的な縛りがない。人類が何千年かけて作り上げた技術進化を一気に人工的に行ってしまうのだから敵うわけがない。

なので、人工知能が人間を超える「技術的特異点」を迎えると、人工知能自体が自分の能力を自己加速させ、次々と新しい技術を勝手に考え出すのである。

人類の夢であった寿命を延ばす医療や、恒星間移動を可能にする宇宙技術なども大きく進歩するかもしれない。つまり何でも作ってくれるような「神様」を、私たち自身が作り出すということだ。

もちろんその「神様」が私たち自身を邪魔な存在として排除し始めるというのは、昨今のハリウッド映画の黄金のワンパターンであるのは誰もが知っていることであろう。私自身もターミネーターのシリーズはもう見飽きている。

しかしそこまでのSF的な話でなくとも、「技術的特異点」に近いような驚きを、自動車の進化においても私たちは経験している。

私の記憶では、スカイラインシリーズに、突如としてR32GTRが出てしまった時の驚きが一番である。あの進化は、全ての競合相手をボクシングで言うところの下の階級にしてしまった程の、反則的なパンチ力であった。神様的なポジションにいた、ポルシェやフェラーリをも引き摺り下ろしたと言っても過言ではない。日本車において、あの自動車が出る前後では性能を見る基準自体が変わったかもしれない。

そして今私が一番「技術的特異点」を感じているのは、昨年2017年における自動運転であった。正直、数年前までは、法的な不備やメーカーのおよび腰、行政が足を引っ張るなど、未来はまだまだ遠いという雰囲気であったはずだ。

しかし一昨年2016年に日産がプロパイロットを世界に先駆けて日本市場に導入し、昨年2017年夏に、アウディが自動運転レベル3の技術をリリースすると発表。

レベル1、レベル2は、ドライバーの安全運転を支援することが主たる目的で自動運転機能を使っている状態でも、運転管理は全てドライバーの管理下でなければならない。

しかし、レベル3以上になると、自動運転モードにおける運転操作はすべてクルマの責任において実行されることになるのだ。これは現実的な言い方をすると、冷蔵庫のような白物家電の故障をメーカーが保障するのと同じように、ある一定の自動運転時における交通事故の責任はアウディが取るという宣言なのである。

この、時代の変化の「余震」に驚かずにいられるであろうか。

また、この技術革新は、単に技術だけではなく、各国の法制度の見直しや事故保険など、クルマ社会自体が抜本的な変革を嫌でも迫られることになる。

及び腰であった国内でも変化は起きている。トヨタなどの御膝元である愛知県において、公道で運転席を無人にして乗用車を走らせる自動運転システムの実証実験を行政公認で行った。

従来は車内の運転席を無人にしての公道走行が認められていなかったが、このような完全な自動運転車の実験を公道で行うのは全国初である。そして愛知県は自動運転の路上実験を積極的に受け入れていくと県知事が発言するにいたっている。

おそらく警察などは事故の責任云々に保守的なので、あまり良い顔をしているとは思えないが、そこはトヨタのお膝元故に、愛知県の存在感をアピールするために行政側との「大人の世界」があったと邪推してしまった。

しかし自動運転は日本独自の保守性により欧州勢に対して出遅れている感があるので、こういう一歩を踏み出すためなら「大人の世界」も大歓迎である。

私の夢は、飲み屋にクルマで行き、帰りは自動運転で「運転代行」だ。きっと私が60歳代前半には、そんな風景が夜の街に当たり前のように溢れているかもしれない。

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text:大鶴義丹/Gitan Ohtsuru
1968年生まれ。俳優・監督・作家。知る人ぞ知る“熱き”バイク乗りである。本人によるブログ「不思議の毎日」はameblo.jp/gitan1968

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